かれこれ2人きりで過ごしてきて、1ヵ月半。

こんなどたばたで良く、生活が続いたものだと、

温かいココアを飲みながら、自分を褒めた。




「ねえ、クロロ、そろそろ帰ろうよ」

「照れなくても良い!」

「照れてないから。皆に会いたいの」

「オレだけじゃ不満か?!」

「そんな事言ってないでしょ?」

「そうなんだな!!こんなにもオレは愛していると言ってるだろう!!」




うんたらかんたら。

ねえ、愛を求めていないあたしは、

貴方には認められないのですか?

貴方が欲しいのは、貴方を愛すあたしですか?

どうでも良くなった筈の問いが、また、

の頭を回りだす。

止まらない。




「2人が嫌だなんて言ってない!!あたしは皆に会いたいの!!」

「それが・・・?」

「莫迦。クロロの莫迦」

・・・・」




その顔は真っ赤で、

思わず抱きしめてしまうくらい。

ひくりひくりと聞こえる嗚咽は、

自分が生み出してしまったものなのだと、

2人きりだから分かってしまう。

判りたくなくとも。




「感じさせないでよ。お願いだから。我儘だって判ってるから」

「嗚呼」

「導のままでいて」

「嗚呼」




のその手をとったあの時から。

2年。

たったそれだけ。

されどそれだけ。

けれど、あたしの行動の先にはいつだって、貴方がいた。

繋がっていたいと、初めて願った縁。

途切れさせないで。

捻じれさせないで。

引っ張れば振り向くその関係のままで。




「帰るか?」

「うん」

「ただし条件がある」

「何?」

「おはようとおやすみのキスを忘れるな。
外出する時は必ず言うんだぞ?出来るだけ付いていく。
ヒソカやイルミと連絡を取るのも禁止だ。それから・・」

「すとっぷ」

「なんだ?」




今までのシリアスな雰囲気を、こいつは跡形もなく吹っ飛ばしてしまう気だ。

昔の、憧れるだけの存在に戻ったかもしれないと思った自分を、

これでもかというほど叱咤した。




「何其れ」

「条件だ」

「自由を教えてくれたのはクロロなのに、また束縛するの?」

「約束の間違いだろう」

「キスは減らないけど、疲れるから嫌。
ヒソカとイルミはお世話になったし、連絡も取り合いたいから却下。

外出の時は言うけど、あたし蜘蛛じゃないんだからね?
付いてきてもらうほど子供でもないし、付いてきて欲しくもないから1人で・・・・」




びくりとはねた肩。

眼から大量の涙を流している団長など見なかったと、

は一生懸命に自分の脳へと言い聞かせた。




「ク・・・ロロ?」

「ダメなのか。ヒソカはよくてオレはだめなのか」

「いや、そういうわけじゃなくて、ヒソカとも・・」

「していたんだろ?ヒソカの願いは聞いたんだろ?」

「GIの中だけって・・」




何を言っても、ただ、涙の量を増幅させるだけかもしれない。




「判った。おはようとおやすみは休日だけなら妥協するから」

「本当か?」

「嘘は理由がないとつかない」

「・・・・・・・・」

「そのもの言いたげな眼は止めて」




じいっと。

欲しい玩具があって、言い出したいけど言い出せない子供のように。

このままだと、玩具コーナーに引きずられていくのがオチだ。




「ハグもつけるか?」

「日曜だけ」

「・・・・・・・」

「日曜だけ。ね?」

「判った」




仕方ないと、やっとこさ、ぱっと見、団長に戻ると、

さっさと身支度をしだしたクロロ。

このホテル生活でキスしたことといえば、

2日目に、ヒソカと間違ってしてしまった、あの過ちくらい。

早く帰れば、それだけ、彼女に触れられる。

はただ苦笑するしかなかった。



子供に戻ってしまったような、

子供の心をやっと思い出したような、

そんな、うきうきな彼を見ながら。




私がおれないと、
皆に迷惑が掛かるから・・・

なんてね。