「ただいま帰りました」
『!!!』
扉を開けて、懐かしい匂いをかぐ。
一緒に入ってきたクロロは、名前を呼ばれることも、
安否を確認される事もなく、
蚊帳の外の小鳥となってしまった事に拗ねて、
隅っこで体育座り中だ。
「清いままだろうね」
「マチ、なんかやらしいよ」
「大問題だと思うわ」
「そうかなあ」
「、もうちょっと危機感を持たないとだめだよ」
「はあい」
「疲れたんじゃねえか?」
「ん〜気はね、体力やなんかは全然」
「それならいいけどよ」
「フィンクスやっさしい」
「やっさしい」
「うっせえ!!シャルもあやかんじゃねえよ!!」
「姉様、これ」
「あ、ありがと」
「気疲れしたなら甘いもの欲しいかと思って」
「カルトは気が利くね。良い跡取りになるよ」
「あそこに戻る気はありません」
「キルアを取り戻すまでは?」
こくりと頷く、独占欲の激しい男の子を、
はふうわりふうわりと撫でた。
眼が細められて、気持ち良さそうに。
やっぱりあの家は猫属性だと、再確認させられる。
「姉様、お話ししましょう」
「君、独り占めはなしだからね。オレ達だって久し振りなんだから」
「そんなに急かなくても」
時間はある。
其々に与えられた時間の中で、多大に重なった時間が。
「とりあえずお昼にしない?あたしお腹空いた」
「貴女の好きなスープスパよ」
「ホント?嬉しい」
その笑顔が見たかった。
もう、独り占めになんてさせてやらないから。
「カルト、ほら、行こう」
「ボクは姉様の弟なのに」
「うん。これから一緒にいっぱい、遊ぼう。ね?」
「はい」
血を知っても死を知っても、
それでもやっぱり素直で無垢で、無邪気な彼は、
誰かに言い聞かせるよりも、
幾分も幾分も楽チンで。
誰かに慕われる事も、やっぱり嬉しいから。
大きなテーブルを囲んでいただきます。
湯気の上がるクリームスープ。
上に乗せられたバターが良い匂い。
かちゃかちゃと、楽しい食卓の始まりだ。
「で、団長といたいどんな生活してたね」
「クロロは時々出掛けるから、そのときを見計らって出掛けたり、
一緒にご飯食べたりなんか、ほんとに普通」
「団長がと普通の生活おくれるわけないよ」
「同感だな」
「まあ、あれやこれや事件紛いな事はあったけど」
きっと話せば長くなる事が、嫌でも想像できてしまったから、
団員達は、それ以上突っ込んで聞かなかった。
「あ、イルミが来たよ」
「イルミ兄様が?」
「拉致られたって聞いて、助けにきたんだって」
「そのまま連れ去ってしまわなかったの?」
「避難はしないって言ったから」
その後、前言撤回にしたくなった事態も内緒。
「イルミって、イルミ・ゾルディックか」
「そう」
「仲良いよね」
「ん〜、懐かれてるだけな気がしないではないけど」
「いいんじゃないのか」
「ボノとコルトピの育て方がいいんだよ」
笑いが起こる。
家族というものはわからなくとも、
ぬくもりはきっと、こんなものなのだろうと、
今なら思える気がするから。
まあ、彼がそんな楽しそうな雰囲気を、黙って見ている筈はなくて。
先程から強くなってきているじめじめ感に、
ほぼ全員が眉を寄せる。
全員の気持ちを代弁するかのように、
盛大な溜息をついたは、
くるりと後ろを振り向いて言った。
お願いだから、ホームでキノコ栽培は止めて。