「誰か助けて」

『ムリ』



はあっと幾度目かの溜息をついて、人様の腰に抱き付いて。

いや、縋り付いて、行くな行くなと涙する我らが団長を蹴飛ばして、

行ってらっしゃいの声と共に、スーツケースを引っ張った。

これから数ヶ月、沢山の家を泊まり回る荷物。



色んな人の所に、お泊まりするなんて話になった経緯を知るには、

少しばかり時をさかのぼって、一本の電話に戻らねばなるまい。

それはそう、蜘蛛がA級犯罪者なのか疑いたくなる、麗らかな昼下がり。



「ヒマだね」

「この頃団長が、山を持ってこないからね」

「どっか行きたいな」

「この間見つけた骨董品屋を気に入っていたんじゃないのか?」

「飽きた」



両親に囲まれながら、今はしんっと静まりかえるホームを見渡す。

クロロが変体腑抜けになってしまわれてからというもの、

あまり盗賊家業を行わなくなった蜘蛛は、

めっきり暇人になってしまっていた。



それぞれの仮宿に皆々が戻ってから、既に3ヶ月。

両親は両親で、別に離れる理由はないと、此処にいてくれているのだが。

そもそも、は此処以外に行く場所がない。

アジトと呼ばれるホーム周辺で、1日の暇な時間と格闘する毎日。



「オレの村にも来たしな」

「なんかね、色々見過ぎて、あんまり刺激がないっていうか・・・」

「そりゃ、蜘蛛に居るんだから当たり前だよ」

「そっか」



お気に入りのレモンキャンディーを口に放り込んで、しんっ。



「またお菓子でも作ろうかな・・・何が食べたい?」

「「何でも良い(よ)」」

「それが一番困るんだけど・・・・ま、いいや」



そう言って、暇つぶしのお菓子作りに興じようとしたを呼び止めたのは、

一本の、電話。

運命の電話。



「もしもし?」

!久しぶり!!』

「ゴン。久しぶり」

『あのね、今ヒマ?』

「うん。凄く」

『じゃあさ、クジラ島に遊びにおいでよ!!ずっと泊まりに来て欲しかったんだけど、
ミトさん。あ、オレの母さんなんだけど、の都合が合わなくって』

「行く!」

『今どこ?』

「ゴンの知ってるホーム」

『じゃあ、迎えに行くね。明後日の朝・・・大丈夫?』

「平気。何時?」

『8時で、ちょっと早いんだけど・・・』

「大丈夫だよ。待ってるね」

『うん!また明後日!!』



電話を切って、先程よりも嬉しそうなを、

両親がそのまま放っておく筈がない。



「どうかした?」

「うん!ゴンが泊まりにおいでって」

「黒髪の方か」

「そう。明後日から」

「ついでに、みんなの仮宿回って来れば?」

「良い暇つぶしだな」

「それならボク等も戻るし」

「楽しそう!!そうする!!」









ってな訳での明後日。

冒頭。



「団長には決まった仮宿がないからね」

「そうなんだ。じゃあ、クロロのとこだけお泊まりなしだね」

「行くな!!1年も・・・1年も・・・・・」

「じゃあ、つくったらいいのに。仮宿」

「そうだな!!!!何処が良い!」



俺達の新居は!!

等と、訳の判らないことを宣う団長を完全無視して、

向こうから手を振ってやって来たゴンを、笑顔で迎える。



「・・・・・凄い荷物だね」

「ついでにみんなの仮宿巡りツアーなの」

「そうなんだ!何日居ても良いから!」

「ありがと。じゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい。ボク等も着いたら連絡するよ」

「はあい」

「気をつけてな」

「うん!」



さてさて、波乱のみんなの所にお泊まりツアーは、

こんなほのぼのした雰囲気で始まってしまったのだった。