先程から、

クラピカの説教が止まらない。




「クラピカ、もう良いよ。夜中だし」

!自覚しろ!お前は女でだなあ!」

「分かってるけど、カイトさんはゴンのお父さん一筋」

「なんかイヤな響きだぞ?」

「あれは明らかに襲われていたではないか!」

「眠い」

!!」




頭の上に昇った月。

外でこんなゆっくりと月を眺めたのは、

ハンター試験以来な気がする。




「寝よう?」

・・・・」

「明日体力保たないよ?」

「そうだぞ?」

「師匠!!」

「そういや、は明日どっかへ向かうのか?」

「はい。町に降りようと思ってます」

「そうか。寂しくなるな」

「どうかした?クラピカ」

「・・・・・・いや」




溜息をついて、

また考える人になるクラピカ。

寝ころんだのは、草の上。

なんてサバイバル。

そういえば、ハンター試験の時は四六時中イルミと一緒だったっけ。




「冗談抜きで寝るぞ」

「明日の朝また話しましょう」

「クラピカ・・・」



「うん?」

「ほら」

「?」




そっと肩からかけられた上着。

ほっこりと温かくなる身体。

彼を冷たくしたクラピカ。

土の中に埋めた涙。

なんて、なんておかしい。

貶めようとしたのはきっと、あたしの方なのに。ね。




「ありがとう」




少しすれば聞こえてくる寝息。

完全に眠っていないとは分かっている。




「ありがとう」




だから、もう一度御礼を言った。








朝日が昇る。

次の日の始まりを告げる朝日が。

だから、出発しようね。

次に。




「行くのか」

「うん」




止まっている訳じゃない。

むしろ、あの時で止まっていたのはあたし。




「いっぱいお話しできて嬉しかった」

「私もだ」

「そっか」




とりあえず、後ろを向きながら前に進むスピードの遅さ。

君はいつだって前を向いてたって分かっただけで良かった。




「またね。カイトさんも」

「今度はこちらから連絡しよう」

「カイトさん、携帯番号送って下さいね」




まだ横になったままの彼に声をかけて、

荷物を担いだ。