久しぶりに普通の街に出た気がする。

ただ、服がぼろぼろでどうしようという話だ。

これでは、着物の原形すら留めていない。

お金はいつも必要な分だけ、パクがくれていたから。




「ん〜・・・・・」




大きなトランクを引き、

裂けまくり、泥だらけの着物のようなものを着て、

人形を背負った自分。

注目の的になるのは当たり前。




考えながら歩いていたは、

前から歩いてくる、バーゲン帰りの3人組に気付かなかった。

どすんっという鈍い音と共に、

沢山の紙袋が散乱する。




「あ、ごめんなさ・・あれ?」

?こんなとこでなにしてんだい?」

「それにしても酷い格好ね」

「まるで滝にうたれたみたい」

「あながち間違ってないというか・・・」

「そう言えば、コルトピからメールが来たわ」

「ああ、泊まり歩いてるっていう」

「なんか人聞き悪くなってない?」

「とりあえず、あたし達の借宿に行った方が良いね」

「その格好じゃ、ショッピングも出来ないわ」

「ありがとう」




すぱすぱ走っていく後ろを、とりあえず着いて行く。

着いたマンションは、

綺麗で、清楚で、静かな庭を持つ、

なんともセンスの良い、落ち着けそうな場所。

流石女性陣。




「まったく。男共と来たら、なんの思いやりもないのかね」

「あたしが無茶したからだと思う」

「とりあえず脱ぎな。後で縫い直しとくよ」

「直せるの?」

「あたしを誰だと思ってんだい?」

「ありがとマチ」

「先にシャワー浴びたら?」

「使わせて貰うね」




久しぶりの、落ち着いたお風呂。

やっぱりつかれるバスタブは素晴らしい。

なんだかんだ言って、日本人の性は捨てられない。




「とりあえず、シズクの服置いとくわよ」

「うん」

「今まで誰の家に行ってたの?」

「ゴンとゾルディック家と、クラピカのとこ」

「蜘蛛の所には行ってないのね」

「いつでも会えるもん」

「初めに私達の所選んでくれて嬉しいわ」

「へへ」




ほかほかと湯気を立てて上がれば、

バスタオルを広げて待っていてくれたパク。

お母さん。と呼びそうになった。




「ほら、折角綺麗な黒髪なんだから、ちゃんと乾かさないと」

「むっ」

「じっとして」

「うん」




なんて優しい手。

ヒソカやイルミやクロロの優しさとはまた違う。




「そうしてると親子みたいだよ」

「じゃあ、マチが次女かしら?」

「シズクは長女って感じがする」

は末っ子かい?」




笑いの響く、お風呂場。




「何笑ってるの?」

「親子計画よ」

「へ?」

「シズクお姉ちゃん、服、ありがと」

「うん良いよ」

「普通だね」

「シズクだから」

「さ、お買い物に行きましょ」

「え?でも3人ともいっぱい買ってなかった?」




此方を見て、にまりと笑う3人の顔が、至極怖い。




「貴方の洋服よ」