「ゴン!!何その格好!さっさとお風呂入ってきなさい!」

「分かってるよ!」

さんもシャワーどうぞ」

「有り難う御座います」

「母さん?」

「一緒に入る?」

「はっ入らない!!」




真っ赤になって駆けていくゴンを、

微笑んで見守っているミトさん。

ふわふわの、太陽を吸収したタオルを持って、

ゆっくりと追いかけて行った。




テーブルに並べられた夕食は、

湯気を立てて美味しそうで。

森が、薫る。

近頃、自分が作ることの多かった食事なだけに、

誰かの、しかも、優しさの込もった食事は、

それだけで、癒しになりそうだ。




?」

「ゴン・・・早くない?」

「とりあえずシャワーだけ。また、外行くし」

「そう・・・なの?」

「うん!!」

「こらゴン!ちゃんと拭いてから出なさいって、いつも言ってるでしょ!」

「拭いたよ」

「もう。御免なさいね」

「いえいえ」




ダメだ。

少し、卑屈になってしまいそう。

優しい、母親。

応える、子供。

夢でしかなかった、あたたかい家庭というもの。




「さ、食べましょ」




冷めない内にね。

そう言って笑ったミトさんの顔を、

は直接、見ることが出来なくなっていた。




食事は華やかに過ぎていく。

隣のゴンが、ずうっと喋っているから。

騒々しい食卓はいつもであれど、

やっぱり違うな。




「ご馳走様!良し、、行こ!」

「早めに帰ってくるのよ!」

「分かってる!!」




また手を引かれて、飛び出す。

それが、朝とは違って、少しばかり、

ほっとしたのは、事実。




は、ミトさんのこと嫌い?」

「え?」




星の海に沈める場所。

2人で空を見上げて、ふと、ゴンが口にする。




「嫌いじゃないよ」

「じゃないなら、どうかした?」

「どうして?」

が、また・・・・」




ヨークシンのあの時みたいで、怖かった。

自分には触れられぬ領域。

分からない、彼女の心。




「違う。ちょっと、妬ましかっただけ。ゴメンね」

「良いよ」




そうやって、するりと口から出た自分の心に驚いた。

ゴンが持つ、話したくなる雰囲気。

キルアがご執心なのも分かる気がする。






「なあに」

「いつか、知りたい」




それは、君を操ろうとかではなくて、

ただ、ただ、知らない世界を知りたい。

純粋な、好奇心。




「いつか、ね」




コレが答えだと、決めつけなくなるくらい、

貴方が生を重ねた時に。




「あ」

「流れ星」

「お願い事した?」

「間に合わないよ」

「だよね」

「でも」

「でも?」

「クジラ島は、ずっとこのままがいいな」

「俺もそう思う」