「で、見て欲しいのって、何?」
「必殺技だよ必殺技!」
「見るだけで良いの?」
「良いわけないだろ!」
ゾルディック家にお邪魔した次の日の早朝、
やたらと早いモーニングコールと、朝食と。
引っ張ってこられたのは、
お庭、と称して良いのかは判らない森。
「クロノスも、勿論獲物もありで、やろうぜ!」
「勝ったら?」
「好きなもん、なんでも一個!」
「チョコロボ君、一個で良いの?」
「負ける気でくんなよ?」
「いくわけないでしょ」
本当に2人とも、上へ行こうとすることが好きだ。
同じように鍛錬して、
同じように誘って、
同じように、相手をしている。
「、動き鈍ったんじゃねえの?」
「キルアが早くなったんだよ」
「もう、も敵じゃねえな!」
「聞かなかったことにする」
目まぐるしいくらいのラッシュラッシュ。
勿論、全てかわし切れてる訳じゃない。
頬を切って、紅が舞った。
「(そういえば、キルアに質問したっけ?)」
「隙あり!」
「キルアがね」
「げっ!!」
今の今まで素手で戦っていたからといって、
杖を出さないとは限らないのに。
やっぱり純粋に、彼等は戦いを楽しんでいるんだなと、
実感する瞬間だ。
全てを、とにかく疑って掛かる自分とは大違い。
お互いに体勢を立て直して、
さあもう一戦と、飛び出そうとしたキルアが、
黒髪の脚に引っかかって、
顔面から、そりゃもう素晴らしいスライディングをかましたから、
ついつい、蹴ろうとした足が滑った。
「ちょっと、嫁の顔に傷つけてどうすんの?」
「、いつ承諾したんだよ」
「してないから」
「あ〜あ。傷だらけ」
「平気。直ぐ治る」
「でも手当てしないと」
「大丈夫だって」
「ゴメン。やりすぎた・・・・」
「キルアが謝ることない」
いつから見てたのか。
今朝、彼の部屋を抜け出したのは気付いていない筈。
伊達に2人とも修行を積んではいないから。
「今日はキルアに付き合う約束なの」
「じゃあ、その後は俺ね?」
「ずっとみたいな言い方は嫌い」
「・・・・・」
「夜はイルミの部屋にいるでしょう?」
「物足りない」
「おやつも一緒に作ろう?ね?」
「なら良い」
良いのかよ!!
そんなキルアの突っ込みは、きっと聞かず仕舞いだ。
「続き、する?」
「なんか、集中切れた」
「だろうね」
そのまま仰向けになったキルアの隣に座り込む。
アジトと同じ匂いのする此処は好きだ。
血の充満した中で嗅ぐ、自然の空気。
青い空。
緑の木。
白い光。
「キルアは強くなりたいんだ?」
「にたきつけられたしな。負けてらんねえ」
「ゴンに?」
「嗚呼」
「そっか」
強くならなければならないと。
そうではなくて、
ただ、なりたいからなるんだね。
ならなければいけないなんて、
誰かの強要でない力は、
こんなにも彼等を強くする。
「今度はあたしが手合わせ頼まなきゃ」
「チョコロボ君1年分で、手、打つぜ?」