掴まれた腕に振り返ってみれば、

靡いた黒い髪。

真っ黒な髪。

闇色の髪。




「イルミ・・・・」

「とりあえず行こう」




ここは一体何処だろうか。

無我夢中で走ったから、

まったく何処だか、分かりやしない。




「ゴメン」

「なんでが謝るの?」

「期待に応えなきゃって、いつでも、必要とされる自分で・・」

「なんで?」

「だって!」




嫌われたくなかった。

誰からも嫌われたくなかった。

自分で、万人から好かれるくらいなら、

気持ち悪すぎて死んだ方がマシだと宣っていても、

それでも、嫌われたくなかった。




「オレだけじゃ不満って事?」

「え?」

「好きだって言ってるのに」




いつだって君は流してきたのに。

また、矛盾が回り出す。




「あり・・が・・・・と」

「ていうか、母さんに好かれたい理由が分かんないんだけど」




口うるさくて、

キンキン声で、

いつだって子供至上主義の。

そろそろ子供離れして欲しいものだとも思う。




「うん」




みんなの目が嫌ってるように見えた。

だから、誰にでも好かれるようになった。

みんな

貪欲すぎて、全て取り零してしまっていたのは自分。




「うん。ありがと、イルミ」

「結婚する?」

「しないってば」




お互い判っているから笑う。




「また来るよね?」

「勿論」

!」

姉様!!」

「キルア。カルトちゃんも・・・」

「親父が、悪かったって」

「ゴメンナサイ。僕がちゃんと気付いてれば」




あたしの為に、自分を責めてくれる人がいるのに。

それが例え、儀礼上だったとしても。

癖だとか、何だとか。

結局は、少しでも、自分を想ってくれているということ。

どうでもいい人を見る目は、

こんなではなかったのは知っている。




「ううん。楽しかった」

「ホントですか!」

「うん」

「オレ、また料理してえ」

「今度はシルバさんと一緒にね?」

「・・・・・・・・・・マジで?」

「上手いんだよ?」

「信じらんねえんだけど」

「美味しかった」

「でしょう?」




くすくす笑う。

笑いが木霊する。

心地よい笑いが拡がってゆく。




「クラピカな、森で修行中らしいぜ」

「何処の?」

「こっから東北に3日ほど走ったトコ」

「・・・・・・・・・判った・・?」

「迷ったら電話すれば?携帯は通じるらしいから」

「ありがと」

「荷物」

「いつの間に?」




渡されたスーツケースが、

少し重い感じがしたが、気にしないでおいた。

後々、多大なる後悔をすることになるのだが。




「じゃあね」




また今度の、手を振った。