ネットサーフィンしててパソコンが光りだしたなんて下手な体験をした後、

は落ちていた。

不思議の国のアリスではなかれど、飽きてくる程に空を落ち続けている。

何処の世界へトリップしたのかとゆう期待はいつの間にか消え失せていて、

はたして空とはこんなに長いものだったろうかとか、

耳が痛くなる筈だとか、どうでも良い事がぐるぐると。

大砲の音や銃声を聞き逃してしまうくらい。




「はい?」




重力の法則等全く無視してふんわりと降り立った船は、略奪の真っ最中。

いきなり降って来た少女にさえ目が行かぬほど緊迫した状態らしく、

隣に着地してやっと気付いたとゆうように、

紙面上では見知った長鼻の親父が、銃をぶっ放しながらこちらを見た。




「誰だお前!」

「迷子・・・・かな」

「なんだそりゃ」

「右斜め後ろ」




ぱあん。

小気味いい音を立てて、また人が倒れる。

死ぬか私なんて縁起でもないことを考えながら、

はヤソップの傍を離れようとした。




「どこ行くんだよ!」

「足手まといでしょ?」

「冷静な嬢ちゃんだな。ま、もうすぐ終わるから心配ねぇ」

「あ、そうな・・のっ!!」




殺気を感じて右に避けたの肩すれすれを、サーベルが通る。

ヤソップの弾でそいつも死んだのだけれども。

殺意って本当に感じられるものなんだと、は思った。

しばらくすれば、戦況はかなり落ち着いたようだ。

ほうらなとヤソップが隣で笑っている。




「お前がなんであれ、お頭に会わせねぇと」

「はぁ」

「着いて来い。お前面白いから、絶対お頭に気に入られるぜ!」




それは有り難いとは心の中で思っていた。

なにせ彼女は、大の赤髪好き。

子供っぽくても包容力がある、それでいて面白い人が好きなのだ。

だからルフィもど真ん中。




「お頭ぁ!面白れぇもん拾ったぜ!!」

「(拾ったって・・・)」

「おぅなんだ!!まった可愛らしい嬢ちゃんだな」

「可愛いなんて言われたの始めて。ありがと」

「そんな事ねぇと思うぞ!自信持てよ!!で、歳と名前、どこから来たかを言え」




いきなり命令口調かよと思いつつ、

返り血を浴びている全員を怖いと感じなかった事に、

グロいものが好きで良かったと感謝して(違)、しゃんと背筋を伸ばした。




「名前は。歳は19。何処から来たかってゆうのは、多分異世界。曖昧でゴメンなさい」

「異世界?」

「形容するならその言葉が正しいと思います」

「なんか面白そうだ。俺の船に乗れよ」

「私、戦闘経験零だし、才能もないけど良いんですか?」

「出来る事すりゃいい。それから堅苦しい口調はいらねぇ」

「有り難う」




満面の笑みだったに違いない。

憧れの船に乗った瞬間、それは脆くも崩れてしまうんだ。

敵船からシャンクスの船へと移動する間は、ずっとヤソさんが色々説明してくれてた。

それから、シャンクスとも少し話して、トリップに有りがちな展開を期待してたんだけど・・・。




「シャン!お帰り!!」




白衣の似合うナイスバディな女の子が、シャンクスと熱い包容を交わす。

ルリと言うらしい女性は、幹部達とさっきよりは少し軽目の包容をして、を見た。

いや、睨んだと言った方が正しいかもしれない。

少なくともはそう感じた。




「おうルリ!そいつは。お前と同じ異世界人だ。部屋へ案内してやれ」

「了解!」




異世界と言う言葉にあまり驚かなかった理由が判明した。

ルリという女性に着いて行きながら、

背中越しにも伝わってくる嫌悪感を、はひしひしと現在進行型で感じている。




「女部屋は私とだけだから、好きに使って構わないわ」

「はい」

「怖がらないで?私も最初は戦闘がある度に震えてたんだから」

「そうですか・・・」

「同じ異世界人同士。仲良くやりましょ」

「お願いします」

「ルリぃ!!ちょっと来いよ!!」

「じゃあね。ゆっくりして」




パタンと閉められた扉。

見た目や証拠のないもので、人柄を決め付けるのは良くないと思いつつ、

する事のないは甲板に出た。

奪ったものを前に談笑する2人は見ない振り。




てくてくと船尾辺りで見つけたのは、煙草をふかす強面。

だがふと手元を見れば、針と糸。

なんちゅうちぐはぐな組み合わせだと、誰もが思うに違いない。

足元にとぐろを巻いているのは帆だろうか。

は臆さずそいつの前に立って言った。




「手伝いましょうか?」

「あ?ああ。新人か。頼む」

「了解しました」




笑いそうになるのを必死で堪えて、副船長の手にあった糸と針をもらう。

針穴に通そうと奮闘した様子が伺えるような糸先に、思わず笑っていた。




「いい度胸だな」

「ちょ!銃はしまって下さい!!洒落にならないですから!!」

「打ちゃしねぇよ」

「それでもです!!」




木箱の上で足を組むベックマンの下に置かれた帆を手繰り寄せ、

当て布(予備の布があったことには驚いた)をしてまつっていく。

暇なのか、ベックマンはそこに座ったままだ。

ルリとシャンクスの笑い声が響いてくる。

ホントに好きだったんだなとゆう思いが瞳から・・・・。

はそこに意識を奪われぬよう集中し直した。

雑な仕事だけはしたくない。




「なかなか上手いな」

「裁縫と料理は得意ですよ」

「役に立つ。あいつとは大違いだ」

「あいつ?」




視線の先を辿っていけば、あの2人が。




「でもルリさんって船医さんですよね?」

「ルリの事だと良く分かったな」

「あっいえ・・・すみません」

「何を謝る。その通りだ。しかもあいつは船医じゃねぇぞ。ただの助手。良い風に言やあな」

「はあ。つかぬ事お聞きしますが、お頭の恋人ですよね?」

「まあな。アイツがどれだけいけ好かなくても、お頭の決めた事は絶対だ。俺が口出す事じゃねぇ」

「え?副船長はお頭の世話役だって」




少しの間。そして爆笑。

あのベックマンがここまで笑うことがあるのだろうか。

かなり疑問ではあるが、実際目の前で腹を抱えているのは副船長で。

とりあえず玉止めをした帆を差し出して、報告せねばならない。




「あの、終わりました」

「ヤソップの言った通りだな」

「へ?」

「面白いものを拾った」

「ああ・・・・」

「助かった。感謝する」

「っ・・・・!!」




反則。

満面の笑み。

だんだんと、2人の笑い声が遠ざかっていくような気がした。