目を醒ませば、隣にあったはずのぬくもりが消えていて。

本当に短い間しか一緒にいなかったのに、

とてもとてもアタタカイ存在だったから、

不安になって飛び起きていた。




「三蔵!!がいねぇ!!!」

「あぁ?ほっとけ」

「なんでだよ!妖怪に襲われたかも・・」

「知るか」

「三蔵!!」



「本当に、何処に行ってしまったんでしょうかね」

「ちょっくら見てくるか」

「おい」

「ああ、進みたいなら徒歩でどうぞ。後でボク等すぐに追いつきますから」

「夜、ジープを出てったとこまではわかんだけどな」

「どっちの方に行ったか見当つきます?」

「こっちだと思うぜ」

「くそ!!」




悪態をつきながらでも、

笑った彼女の顔が、至極悲しそうに見えたことを思い出して。

4人はが行ったと思われる方向へと歩き出した。

アクセサリーのことも、断片的に見える懐かしさも。

どうしてか、ココで離れてしまったら、

もう2度と、彼女と会えないような不安が、4人を襲う。



シャランと響く黄金色のバングル。

ライターとぶつかる深紅の指輪。

動きに合わせて揺れた紫のネックレス。

きらりと光る翡翠のピアス。



知らず知らずもてあそんで、

4人を静寂が襲っているときだった。

ピーピーとジープのなく声が響く。




「どうしたんです?」

「ピー!」

「これは・・・・」

のつけてたロケットじゃん!」

「綺麗な石が嵌ってますね」

「おっと!」




金、紅、翠、紫。

十字架の先端で光る石は、本物ではないけれど。

ぱかりと開いたロケットの中から零れ落ちたしわくちゃの紙。

それを胡散臭そうに拾い上げた三蔵は、眼を見開くしかなかった。

それは明らかに自分達の字。




「・・・・・・・これは」

「俺等の字、だな」

「なんであいつがこんなもん」

「これと、なんか関係あんのかな」




腕をかざして、光に当たったバングルが、

ぴかりと光った瞬間だった。

例えばそれは言葉の端々に。

態度の断片に。

思わず返してしまったおかしな返答に。

つながった、キオク。

悟空色と、4人の前で灯したランプ。




「いつも癒してくれてありがと」

「ありきたりなものでゴメンね」

「向こう行って邪魔だって捨てないでよ?」

「カフスが少しでも軽くなるように」





「あたしは忘れないでしょ。忘れるのは―――――」







あの時気づけなかった震えていた肩も。

へらりと笑ったその笑顔も。

彼女がヌクモリを求める理由も。

独占したいと制した抱きつき癖も。



4人をまた、静寂が襲う。

さーっと駆け抜けた風。

彼女は今、何処にいるのだ。

会って、真っ先に駆け寄って。

抱きしめたい。




「まったく、予想外の力だな」




森の中から姿を現した神様は、

その世俗的な風景に至極不釣合いで。




「あいつを何処へやった」

「くくっ楽しいね」

を何処へやったんだよ!!」

「お使いだよお使い。向こうの本拠地へな」

「なんだと!!」

ちゃん危ねぇんじゃねぇの!?」

「だったらもがけよ。オレは止めも救いもしねぇ」




観ててはやるさ。

今まで上でそうしたように。

何処までのつながり。

たった一瞬の。

けれどもとても大切な。

三蔵の発砲をいともたやすくよけて、

血相を変え走って行く4人組に、

観世音菩薩は、ただ笑顔を向けていた。