乱れたベッドの上で、今日もまた、溜息から始まる日常。

投げ捨てられたシャツや下着を拾い上げ、

シャワーを頭から浴びる。

冷水が、火照った身体を冷ましていくのが判った。




「嗚呼。糞っ。SM変体オヤジめ」




いつもよりずきずきと痛む背中をさすりつつ、

色素の薄いさらさらの髪の毛をかきあげた。

今日も明日も明後日も。

誰かしらが寝転ぶそのベッド。




「どうせなら、スネイプみたいな人に抱かれたいよな」




きゅっと蛇口をひねって水を止めると、

適当に水気をふき取り、下スウェットのみで部屋へとかえり、

制汗スプレーを思いっきりベッドに吹きつけた。

嫌味なタバコのにおいと、情事の証拠を消すように。



本棚に仕舞われたハリー・ポッター全巻と、

スネ攻めアンソロジー集。

シトラスの香りしかしないベッドにダイブし、

隣にある(男主夢小説HPがわんさかお気に入りに登録された)

ノートパソコンの電源を付けた時だった。

玄関のチャイムがけたたましく鳴り響いたのは。




ピポピポピポピポピポピンポーン。




どれだけ連打したのか、素晴らしく木霊するその音に、

不快感を隠さず扉を開けて、即、閉めた。




ピポピポピポピ・・




「判った!!判ったから鳴らすなよ!!近所迷惑だろ!」

「1フロア一室の高級マンションに住んどいて何を言うか」




恐る恐る扉を開ければ、

にいっこりと笑っている髭長爺。




「あんた誰」

「アルバス・ダンブルドアじゃ。よく知っておろう?」

「アルバム・ダンスフロア?そんな奴知らね・・」

「現実逃避は良くないのお」




ふぉふぉふぉと笑いながら、

招き入れてもないのに扉をくぐってくるそいつを、

はただ呆然と見つめてるしか出来なかった。




「不法侵入罪で訴えるぞ」

「ホグワーツに行きたくないのか?」

「ユメはユメだろ」

「ユメでないお誘いじゃよ?」




どういう趣味のコスプレ客だと思いつつ、

とりあえずお茶を出してしまうあたりは職業柄。

そんなの持っていたカップを、

ひょいっと杖らしきものの一振りで机にたどり着かせた爺は、

人当たりのいい笑みを浮かべ、再度を見つめる。




「・・・・・・・マジ?」

「大まじじゃ。、君はれっきとした魔法使いじゃからの」

「なんだ?この夢小説としてはありきたりな展開」

「セブルスと毎日会えるぞ?」




ぴくりと反応したその名前。

死ぬ前に抱かれるなら絶対この人と、毎日毎日思ってきた。

変なコスプレ集団だとか、そんな事が頭から吹っ飛ぶくらいに。



恥ずかしげに触れてくるような手。

少しざらついた肌や、

手入れの行き届いていない髪の毛。

こわごわと、壊れ物を抱くようにそっと・・・・。




「ホントに?」

「勿論じゃ」

「落とせる?」

「それはの技量しだいじゃのぉ」

「てか、あんたホモに偏見ないわけ?」

「ホグワーツにホモ規制はないぞ?」




そりゃそうか。

双子は毎日うはうはだし、ハリーはドラ子を組み敷いてるだろうし。

これはの妄想に過ぎない事を忘れているようだ。




「けど、俺、もう19だぜ?」

「それは心配ない。そのままで平気じゃ」

「なんで?」

「校長命令じゃからの」

「職権乱用・・・・別にいいけど」

「言葉も問題なさそうじゃし」

「親父がブリティッシュだからな」

「でわ、姿くらますぞ」

「おい!!」




叫んだときにはもう遅くて、

気付けばそこは、ホグワーツの校長室らしきところ。

眼を見開いているのは、夢にまで見た陰険薬学教師。

たっぷりの沈黙の後、ふるふると震えだした

びくついたスネイプが、恐る恐る大丈夫かと手をかけようとした時だった。




「セブセブだぁぁぁぁ!!!!!」

「なっ!!」

、ここでコトを運ばぬようにの」




思いっきり抱きついた拍子、押し倒してしまった事に罪悪感はゼロらしい。

香る薬品の匂いも、なしてかべとついている髪も気にならなくて、

ただただ、嗚呼。

やっぱり暖かいな。

と、とても和んでいるだけだった。




「はっ離れろ!!」

「ええ?ヤダ」

「おい!!」

「初めてでも平気だよ?俺、リードするし」

「何をほざくか!!!」

「セブルス、この間話した編入生じゃ。今から大広間に連れて行かねばなるまい」




こいつが!?

と言いた気な目線もなんのその。

とりあえず起きたは、

今の今まで上半身裸だったことに気付いて、与えられたローブに着替え、

うんざりだと言う表情で待っているスネイプの腕に絡みついた。




「離せ。鬱陶しい」

「だって、ダンスフロアが落とせるかどうかは俺の力量しだいだって言ってたから、
本気で行こうと思って。まずはスキンシップだろ?」

「(ダンスフロア?)お前の脳みそは腐っているらしいな」

「そうかもねぇ。ま、大分昔からだから別に気にしちゃいないけど」




目の前に見える大広間の扉。

どれだけ払おうとしても離れなかったが、

するりと腕を解いた。

イヤだった筈なのに、無くなったヌクモリが宙を彷徨う。




「一応、初めての挨拶だしな。ま、これからはところ構わず抱きつくけど」

「ヤメロ」

「言っただろ?落とすって。
俺、死ぬ前に抱かれるなら、絶対セブルスが良いと思ってたんだ」

「なっ///////」

「覚悟しとけよ?」




ばたんっと勢いよく開けた扉。

一斉にこちらに向いた、眼、眼、眼。

青やら緑やら黒やら黄色やら。

なんとも鮮やかな光景だ。




「今話しておった転入生じゃ」




かつかつと歩いて教員席近くの台へとあがる。

ちょこんと置かれた組分け帽子を、ぽすっと被った。




『珍しいお客だね』

「ホモが?」

『いやいや。異世界人』

「(やっぱりホモは普通なのか・・・)」

『ふむ』

「スリザリンが良い。スリザリンしかヤダ」

『何故かな?君にはハッフルパフが合うと・・』

「スリザリンって言わなきゃ、
千切って燃やしてセブのどろどろぐちゃぐちゃの大鍋に突っ込むぞ?」

『・・・・・・・・・・・・・』




しっかり筒抜けの会話に、大広間騒然。

頭だけで考えると言う脳は無いらしい。

しばし無言だった帽子は、息を吸い込むと、寮の名前を口にしようとした。




『グリフィンドっっっっっ!!!!』




ぐちゃっと帽子の口を閉めて、

己の頭から其れをのけると、思いっきり睨み付けた。

帽子は呼吸困難で青くなっていっている。




「おい。今の寮は気のせいだな?ん?」

『っっっっっっ!!』

、その辺にせんと、今後の組分けが面倒くさくなる」

「でも、ダンスフロア、毎日会えるって言ったじゃん?
スリザリンじゃないと会えなくねぇか?」

「わしはダンブルドアじゃ」

「どっちでも変わんないって」

、その辺にしておけ」




見るに見かねたスネイプが、哀れな帽子を救い出し、

グリフィンドール席のほうへと押しやった。

それに乗じてまた、絡んでくる腕。




「んじゃ、毎日会ってくれる?遊びに行ってもいいよな?」

「いいからさっさと席に着け」

「よし!!じゃ、グリフィンで良いよ」




ぽいっと帽子を捨て置いて、グリフィンドール席へと赴く。

たまたま空いていた赤毛の隣へ腰掛けたと同時、

ダンブルドアが口を開いた。




は少々こちらの不手際で、入学が大分遅れたが、
皆と同じように1年から勉強する。仲良くするように。では、思いっきりかっ込め!!」