「セ〜ブ〜ル〜ス〜〜〜おっはよ」

「離れろ」

「ええ?ヤダ」

・・・・」




今日もまた、腕に絡みつかれながら、廊下を歩く教師が一人。

が転入してきて既に3日。

他の生徒もそろそろこの光景を見慣れてくる頃だ。

この3日、は出れるだけの1年の授業に出ていたが、

そろそろ物足りなくなってきたらしく、

今日から2年の授業を受けるコトが決まっている。




!!おはよう」

「やあハリー。今日もドラ子をいぢめて来た?」

「向こうがよって来るんだ」

「そこは少し避けてやると効果的だ。
ああゆう奴は、そうした方が従順になりやすいぞ」

「試してみるよ」

「今日もラブラブね」




獅子寮3人組とは、入った日にお近づきになった

大広間に着いた今でも、

腕はスネイプの其れに絡ませたままだ。

だって、とてもアタタカイ。

すこしだけ、抱きつく力を強めた。




「じゃ、後でな!!」




元気よく手を振って、

スネイプの隣にいるまま、教職員席へと共に向かう。

これも、この3日で見慣れてしまった光景。




「はい。あ〜ん」

「ヤメロ」

「落とそうとしてんじゃん。だってセブルス抱い・・うえっ」

「それ以上先の言葉を発するな」

「じゃあ、ほら。食べてよ」




毎朝毎朝毎朝毎朝・・・・。

初めは生徒達も驚きはした。

天変地異の前触れだとか、あの転入生が毒薬を飲まされたとか、

この場合被害者はスネイプの方なのだが、

如何せん。

日頃の行いの所為で、が被害者と化した噂が飛び交っていた。



それも、初日で消えてしまったが。




「今日はさ、2年生の授業にも出るんだ」

「聞いている。勉学には秀でているとな」

「秀でてても嬉しくないけどねぇ」




どれだけ1位をとっても、

誰も隣になんかいてくれなかったから。

時々見せる悲しそうな笑み。

本人は隠しているつもりかもしれないが、

スネイプには良くわかる。

全てをあきらめたようなその笑みを、自分も過去、浮かべていたから。




「他の科目と同じようにDADAも集中してもらいたいものだ」

「セブルスに見惚れちゃうからいっつも失敗するんだって」

「お前はよく、そんな台詞を恥ずかしげも無く・・・」

「だって、セブルス面白いし。
めちゃくちゃカワイイ反応してくれるから、俺、受けだけど攻めに回ってもいいよ?」

「・・・・・・・・・・」

「セブルス?真っ赤だな」

「うううううううっうるさい!!」




汚れていた毎日を、忘れてしまえるくらいの輝き。

忘れさせてくれるのは、目の前にいる陰険。

君が好き。

ただ、それだけなんだ。



ふと大広間の扉を見れば、入ってきたブロンド。

ちらちらとハリーの方を見ては、首をかしげている様。

にったりゃぁと笑ったは、びくりと遠ざかったスネイプを珍しくも放って、

教員席からジャンプすると、そのままスリザリン席へと赴いた。




「やあ、ドラ子。ご機嫌斜めだな。昨日ヤり過ぎたか?」

「貴様は、朝っぱらから下劣な・・・」

「お兄さんがハリーに相手してもらえる方法を教えてやろうとしてんのに。
今の、相手にされないままの状態で卒業してさよならしたら、もう会えないだろうなあ?」

「待て」




後ろ手を振って遠ざかろうとしたのローブをはしっと掴んで、

教えて下さいと蚊のような声で呟いたマルフォイ。

なんて可愛らしいんだろう。

純粋に好いている両極端の世界。



よしよしと頭を撫でて、素直でよろしいと褒める。

素直になればいい。

勝負しか出来ない自分とは違うから。

眩しすぎる世界がよぎる。

染まらないけれど、手に触れた其れは、とてもアタタカイ。




「判ったか?」




どこからか取り出したメモを必死で取りつつ、ふむふむと頷くマルフォイ。




「向こうは今、押してだめなら引いてみろ作戦に出てる」

「根競べなら・・・・」

「まあ、どっちの方法をとるかは自分で決めろ」

「判った」

「あああああああ!!!」

「なっなんだ!?」

「セブルスいないし!!置いてかれた!!」




項垂れているを完璧に無視して朝食の席へ付く。

即効で大広間を出て、地下室へと向かった

DADAの教師となった今でも愛用し続けているその部屋に。




「お邪魔しますよ」

「ノックをしろと言った筈だが?」

「置いていくのが悪い!!」




そうやってつっけんどんにしていても、

紅茶を出してくれなかった日は無い。




「授業が楽しくてさ、仕方ないんだ」

「ほう?それは我輩に対する嫌味かね?」

「セブルス見てると思い出すから」

「どうせ下らぬ内容だろう」

「男に抱かれて金を巻き上げてた生活を」

「なんっ!!」

「ホントだよ」




DADAの授業よりも、君に抱かれる事を考えてしまう。

どう抱かれよう。

どう愛されよう。

どう・・・・愛そう。

駆け引きだ。これは。



これまで通りソファに腰掛け、

こちらを見ずに、けれど紅茶を出してくれたスネイプの上に跨る。

君の闇を愛した。

融けさせてくれると思ったんだ。

こんな自分でも。




「ホントだよ」




君への愛は。

冗談でこの3日、スキだスキだと連呼しているわけではない。

それを、判って欲しかった。

ほら、また、悲しそうに笑って去っていく。

これまでの2日とは、少し違った3日目の朝。