だって・・・・足りなかったんだ。

あんな、冷たく冷え切った物だけじゃ・・・・。

セブルスを思って自分を慰めてから1週間と4日。



どうもスネイプは落ちてくれそうも無く、

誰かに抱かれない夜が、もう、2週間も続いた事になる。




「はぁ。ありえねぇ」

「何が有り得ないの?」

「今の生活がだよ」

「ボクは、の学力が有り得ないと思うね」

「ハリーに同じく」

「そうかぁ?」




がいるのは、薬草学の教室。

そして、一緒に受けている生徒達は6年生だ。

ホグワーツに入って、たったの2週間。

自分達が5年かけて学んだ事を、たった2週間でやってのけたは、

そりゃあ、怪物並みの学力だろう。




「俺、一回でも読んだり聞いたりしたもん忘れねぇし」

「・・・・・・・・うそ」

「まじ。大マジ」




改めて、の怪物伝説が、

深く深く、皆の心の刻まれたのであった・・・・。



これで今日の授業は終わりで、

3人と談笑しつつ、夕食の席に向かいながら、

頭を占めるのはやっぱり。




「あ!!セブルス!!」




今さっきまで3人の隣にいた

はるか何メートル先か。

かろうじて黒い塊が見える程度なのに、

次の瞬間にはもう、其処に到着していて。

顔を見合わせ、溜息をついた3人は、

いつもどおり、そんなを放って、夕食の席へと付いたのだ。




「なあなあ!ハリー達に追いついたぜ!!」

「知っている」

「凄い?」

「もはや人ではない」

「やったね!!」

「褒めとらん!!」

「なあ、セブルス?」

「なんだ」




スネイプ教授と呼べとか、離れろと言う台詞を聞かなくなって、1週間。

恥ずかしいと言う思いも、大分と薄れてきたのだろう。

確実に、そりゃもう確実に色に染まってきている。




「俺のコト好き?」




マントの裾を豪快に踏んずけたスネイプは、

周りの生徒がさっと避ける位素晴らしい、顔面直撃ダイブをかました。

上目遣いで、涙を堪えたその台詞に、

一瞬思考が停止したのが理由。




「なあ、好き?」




スネイプが倒れてもなお、腕に絡みつき、

ちょこんっとしゃがんで聞く。

自分で回復せざるを得なかったスネイプは、

今、この場にいる全員に忘却呪文をかけたい思いを押さえ込み、

少し、俯き加減になってしまったに、溜息をついた。




「嫌いなら初日から振り切っている」

「え?そんなこと出来たの?てっきりマゾかと・・・・」

「やはり嫌・・」

「ああああああ!!言うな!!」

「・・・やめっ!!しまっ!!」



傍から見れば見事な絞殺現場だ。

しばらくして我に帰ったが、スネイプの首から手を離した時には、

花畑の一歩手前だったらしい。

げっほげっほと咳き込みながら、隣にいる彼、を見つめる。

突然ダンブルドアが連れてきて、

転入生だと言われたその日から、君に瞳奪われていたと言うのに。




「じゃあ、好き?」

「・・・・・・・・わからん」

「なんだよ!恋愛経験零なわけが・・・・あるのか?」

「うるさい!!」

「(予定外だ・・・・)」




学生時代というものを過ごしたのだから、

誰かを好きになる感情や、

愛したいと言う思いを抱いた筈だと、

勝手に思い込んでいた。

ヴォルデモートのお慰みにもなっているのかも・・・・とか。

赤面して叫ぶスネイプは可愛いけれど、

其れとこれとは別問題だ。




「それじゃダメじゃん」

「なんだ?」

「こっちの話」




自分は愛して欲しい。

闇に融けるほどに。

自分だけを見つめて、夜の時間を忘れるくらい。

愛してあいしてアイシテ。



こんなにも貪欲な生き物だったか?

止まらない思いが、

今夜爆発してしまうなんて。

いや、いまの時点で既に、決壊は崩壊していたなんて。



じわりじわりと変化する雰囲気に、

少しでもスネイプが気付いていたなら、

あんな事には、ならなかった筈だろう。



少し滲み出た夜の香りは、

直ぐに夕食の匂いでかき消されて、

いつものように教員席で仲睦まじく食事をする。




「あ、ソース付いてる」

「普通にとれ!普通に!!」

「面白くない」

「面白みはいらん!!」




ぺろんっと舌で舐め取ってやれば、やっぱり赤面する。

生徒達もなれてしまったのか、

初めの頃のように、卒倒してしまう生徒はいなくなった。

眉間にしわを寄せたまま赤面するスネイプ。

まあ、卒倒してもおかしくないか・・・。




「なあなあ、今夜、遊びに行っていい?」

「教職員席でそのような行為を是とすると思っているのか?」

「折角、美味しい抹茶手に入れたのにな」

「就寝時間前に来い」

「折角夜の営みも・・」




今度はスネイプが料理を口に押し込む番。

この席で、床の話をする事を、

スネイプはいままで全力で阻止してきた。

自分が恥ずかしいと言うのもあるが、

大体、男と女でやる営みの筈だからだ。




「がっっぽへへにえるぁ?」

「口のものを飲み込んでから喋れ」

「適当に話して見ただけ」

「ヤメロ。汚らしい」

「俺、元から汚いもんね」

「開き直るな!!」




見上げた月が時間を告げる。