「解き、放つ!」
目の前のモノノ怪。
切る、道連れ。
ぽっかりと空いた、空間。
『鈍い』
「いつも通り、ですよ」
いつも通りの、振りをする。
「おかえり」
聞こえない。
迎え。
ぽつり。
触れた肌が、痛い。
ぽつり。ぽつり。
さーーーーーっ。
『刃が鈍る』
「解って、います」
『なら急げ』
彼女が欲したものは何なのだろうか。
それさえ、解らない。
いや、自分は、彼女の範疇さえ知らない。
傘を広げ、宿屋を探す。
彼女を捜す。
「お宿を一晩、御願い、したいのですが」
「お一人ですかい?」
「・・・・・・・・ええ」
通された部屋。
広すぎる部屋。
静かな部屋。
冷たい部屋。
『なんなら記憶を消してやろうか』
「必要、ありませんよ」
『だったら、モノノ怪を追いかけろ』
「追いかけてるじゃあ、ありませんか」
『その中に赤い瞳を見出すな』
「私がモノノ怪だったら連れてってくれた?」
「其れを見ているのは、貴方では?」
『戯れ言を』
全て貴方の所為だと言えば、
きっと彼女はそうかもねと、笑うのだ。
総てを受け入れ、全てを拒絶するのだから。
さーーーーーーっ。
窓枠から吹き込んでくる雨。
濡れてしまった畳。
ぽたり。
ぽたり。ぽたり。
「・・・・・・・・・っ」
呼びたいのに。
声を張り上げて呼びたいのに。
突き放した。
言葉で、心で。
「陳腐な、決まり文句しか、出てきやせんねえ」
ずっと一緒にいてくれ。
なんて。
『俺を抜くのにいるのは』
「真と、理」
『あいつの真と理は・・・』
「知りたいんで?」
『さあ、な』
さて、捜しに行こう。
いつものように。
貴方の真と理、お聞かせ願いたく候。