ここは、
国際的某貿易会社社長兼、恐るべき店舗数を誇るカフェテリア大元兼、
裏世界に名を馳せた暗殺一家がお住まいの、
家の邸宅。
南向きの窓から差し込む光は暖かく、
ベッドで安らかに眠る少女へとさす。
真っ白な天蓋付きのベッドで上下する布団は、
主人の優しさと淑やかさを表現しているかのよう。
さあ今日も、美しい鳥の鳴き声と共に、
家、たった一人の跡取り娘、
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。
文武両道、食彩兼美なの優雅な1日が、幕を開ける・・・・・・・。
筈。
ぴぴぴぴぴぴっ・・かち。
「ふう」
普通に一般ピーポーと同じ方法でお起きになった様は、
さっそく罠を仕掛けに赴いた。
何故なら・・・・・・。
どすうぅぅっっっ!!!
特大サイズの剣がいくつか床に刺さる。
後でまた修理を頼まねばなるまい。
ちなみにこの目覚まし時計は、
あの変態執事が半径5キロ(使用人離れと本邸との境目)
を超えた瞬間に鳴り響く仕組みです。
「クフン。流石に私も死にますよ?」
「朝っぱらから主人をベッドに押し倒すような執事は死ねばいいのよ」
「酷いですね。私は様にお早うのキッスwがふっ!」
骸は死亡した。
「着替えるからさっさと出てって頂戴」
華麗な上段回し蹴りをお決めになった様は、
転がっている執事を汚れ物よろしく摘まれて、
窓の外にお捨てになりました。
有り得ないくらいの怪力は、この際スルーで。
むしろ気にしたら終わりです。
北欧3国きっての家具メーカーに作らせたクローゼットを、
お開けになった様は、
「ふう」
見なかったことにしました。
其処に並んでいた、入れた覚えのない、
メイド服やらナースやらチャイナ服やら。
勿論、それは速攻燃やされて、普通の御洋服に着替えられましたが。
「おや、折角私が直々に選んだお召し物はどうなさいました?」
「燃やしたに決まってんでしょ。この変態が」
「言葉攻めですか?S属性なんですか。
マニアックですが受けて勃ちま「まじで首にして宜しい?」ダメです」
「今度18禁発言したら、もっかい牢獄に送り返すわよ」
「ホントに素直じゃありませんね。いけませんよ?
ツンデレはデレがあってこそのツンデレなんですか「お父様?新しい執事首にし」何故ですか!!」
「さっき行った言葉が聞こえなかったの?
というか、勝手に人の携帯電話をぶん投げないで下さる?」
「あれの何処に18禁が含まれてるって言うんです?」
「事実に反することを言うのも禁じます」
「クフッ。わたしとお嬢様の仲でしょう?」
「・・・・・・・・・(阿呆の子なのね)」
「何人たりともわたし達の結婚式は邪魔させません」
「もう一生、夢の中で過ごせばいいわ」
丁度其処に置いてあった重そうな銀トレーを振り上げなさった様。
かなり殺気を含まれております。
むしろその殺気だけで人を殺せそうです。
要らないスキルを身に付けられてしまったのでしょう。
「お嬢様、さあ、朝食にしましょう」
「・・・・・・・」
「こちらが今日の御朝食ですよ」
そう言ってカートを引いてくる姿は様になる。
頭で揺れているパイナップルを除けばだが。
「バゲットとスコーンに、カプレーゼとフルーツ・カクテル。
カナダケベック州産メープルシロップとバターを用意してますからね」
「・・・ありがと」
「珈琲と紅茶どちらにします?」
「珈琲」
「かしこまりました」
私の好物を判っていて。
毎日出される、2種類のパンと、メープルシロップ。
「林檎のコンフィチュールも御座いますよ」
「要らないわ」
「珈琲です」
「今日は甘いのが・・」
「勿論カフェ・モカです。フルーツの盛り合わせをどうぞ」
なんて、長年一緒にいる夫婦関係のような・・訂正。
あんなのと夫婦なんておぞましい。
主従関係がすっかり成り立ってしまっている。
どうして骸には判るのかしら。
甘さ加減も最高だわ。
フルーツのパイナップルを飲み込んだ後、くるりと振り返り、
「ねえ骸・・・」
一時停止。
少々お待ち下さいませ。
悶えている骸を、様が凝視中で御座います。
「・・・・・・・・・(話しかけたくないのは気のせいかしら)」
「お嬢様がわたしのブツを口に含まれ・・ぐはっっっ!!!」
「ご馳走様。もしもし?新しい執事を1人御願いしたいのだけれど」
いつも切れの良い蹴りですが、男の急所を狙うとは・・・・。
今まで一番キましたよ。
むしろそのまま逝ってしまえばいいわ。
(輪廻の果てより来たという執事が・・・)
(輪廻の外側まで捨てて来なさい)