ここは、
国際的某貿易・・[略]
家の邸宅。
南向きの・・[略]。
さあ今日も、・・[略]・・の優雅な1日が、幕を開ける・・・・・・・。
筈。
経済面、社会面、国内面、海外面、地域面。
様は、ぱらぱらと新聞を捲り終え、一つ溜息をつかれると、
カップの底に残った、アイリッシュミルクティーを飲み干され、
執事を呼び出すべくベルをお鳴らしになりました。
「紅茶のお代わりを頂戴。それから日本の新聞を全種類。
後、今日の予定に入ってたパーティーをキャンセルするわ」
『かしこまりました』
眼鏡を机において首を回す。
ばきばきばきっっっ。
様は慢性肩凝りでいらっしゃるため、
豪快な音が部屋に響きました。
お嬢様としては由々しき問題で御座います。
しばらくすれば、コンコンっと控えめなノックオン。
「失礼いたします」
「・・・・・・・・」
「紅茶のお代わりをお持ちいたしました」
「私、日本の新聞持って来てって言わなかったかしら?」
「すっすみません!!あつっっ!!嗚呼!申し訳御座いません様!!」
「少し散っただけよ。新聞持ってきて頂戴」
「はっはい!!」
新しく入った執事は、可愛らしいのだが、如何せん、
ダメダメなのだ。
執事にあるまじきどたばたという音が廊下に響いている。
「おっお待たせいたしました!!」
「綱吉・・・・貴方、大丈夫?」
「え?」
「これ、日本の雑誌よね?」
「すっすすみません!!」
「いいわ。今すぐ必要って訳でもないから」
しゅんっと項垂れれば、蜂蜜色の重力に反した髪の毛が揺れる。
そんな彼にも1つだけ、特技があるのだけれども。
「紅茶、お変わり入れて頂戴」
「はい!!」
ロイヤルドルトンのカップで促す。
喜々として紅茶を注ぐ姿に、様はにっこりと微笑まれた。
「お待たせいたしました」
「ありがとう。ホント、綱吉、紅茶いれるのだけは上手いわね」
「あからさますぎますよ!!・・・・すみません」
すみません。は、もう、彼の口癖のようなモノ。
付け合わせのオートミールクッキーを口に運びながら、
今日行く筈だったパーティーの招待状を綱吉に押しつけた。
「どうかなさったんですか?」
「別に?ただ、元々私、その人嫌いだったから」
「超個人的理由じゃないですか!!」
「いいの。支障はないわ」
「支障ありまくりですから!!」
「綱吉、あんまり突っ込みし過ぎると禿げるわよ?」
「そんな文句は聞いたことが無いのですが・・・」
「私がつくったもの。綱吉のために」
「(嬉しくねええええ!!!!)」
そんなこんなで漫才を繰り広げている2人の耳に、
ノックオンが響いた。
「失礼します。綱吉さん、少々宜しいですか」
「どうした?」
「例の・・」
「すみません。ちょっと・・・・」
軽く会釈してメイドの話を聞いた綱吉の顔が陰る。
「どうかした?」
「来客のようです。少し外させていただいても・・?」
「構わないわ。次は新聞、持ってきてね?」
「ホントすみません」
困ったように笑って、の自室を後にする。
「白い振りしちゃって」
いつも通り、はにかんで、いつも通り、ダメダメで。
知られてないとでも思ってるのかしら。
まだ湯気の立つ紅茶に口付けて、もう1つクッキーを放り込む。
頬杖をついて見つめる先は窓の外。
重厚な構えの門の外。
黒いオーラが充満しているダメダメ執事に。
「帰れって言ってるだろ。変態が」
「クフッ。何度でも巡って見せますよ」
「無駄だって事が分かんないのか。カスパイナポー」
「私は干涸らびてなどいません!!!!なんと失礼な!!」
「うっさいだまれ。耳が腐る」
「執事として最低なあな・・「わざとに決まってんだろ。ボケ」
様はもう一度クッキーをお口に入れられて、
変態執事の断末魔をバックミュージックに、
パーティーの招待状を選り分けておられます。
もうそろそろ、変態を撃退したダメダメ執事が帰ってくることですから。
「申し訳ありませんでした」
「誰だったの?」
「様には欠片も、これっぽっちも関係ない、他星人です」
「そう。で、新聞は?」
「あ!」
「(これはわざとじゃないわね。絶対。確実に)」
「すみません」
「じゃあ、代わりに紅茶をもういっぱい入れて頂戴」
「畏まりました」
(そろそろしっかりしてくれない?)
(ちょっと待って下さい。スレツナは久しぶりすぎて)