[略]。
さあ今日も、の優雅な1日が、幕を開ける・・・・・・・。
筈。
「今日の書類はそれで終わりだよ」
「そう」
「あと紅茶を入れてあげたから」
「そっちの机に置いておいて頂戴」
机に置かれた決して少なくない書類を、次々と片付けていく様。
流石と言ったところでしょうか。
そんな様の肩に恐れ多くも止まったのは、
黄色いもふもふの鳥。
通称ヒバード。
「、、アソブ」
「もう少し待っててくれるかしら?後で・・」
「ちょっと、僕を差し置いて鳥に構うってどうゆう事?」
「ヒバードにトンファーを向けるのは止めなさい」
「?おしおきされるか・・「夕飯の準備の時間でしょう?」
「すぐに鳥の丸焼きを作ってきてあげるよ」
自分のペットにまで手を出そうとする執事に、
内線電話を殺人的なスピードで投げつけて、
自分の部屋から追い出された様は、
ヒバードの頭を少し撫でて、
こんな癒し系の執事がいればという夢を、
すぐに消し去り、書類に向き直られました。
そこから神のような早さで書類を片付けられた様は、
ヒバードと戯れながら、しばし、
本当に、本当に珍しい癒しの時を過ごしておられます。
もちろんそれは、すぐに破壊されてしまうのですが。
ノックもなしに扉を開けた主によって。
「、夕飯・・・」
びゅんっっっ!!!
「ヒバリ、ヒドイ。ヒバリ、ヒドイ」
「一品追加してくるから待ってて」
「恭弥、今直ぐ壁に刺さっているトンファーを抜いて、
お茶の用意をするのが貴方の役目」
「食べさせて欲しいならそう言えば良いのに」
「良い耳鼻科を紹介しましょうか?」
「口開けなよ。ほら」
「(この子の脳も可哀相な作りなのね)」
目の前に、机にのっかってまで、
差し出されているスプーンは無視して、
勿論、ご自分で箸を取られた様。
未だに視線の先で揺れているスプーンは、見ざる能力発動です。
しかし、どうやら様の顔色が優れないご様子。
「どうかした?」
「っ・・・・!!!」
口を押さえて、部屋に備え付けの御手洗いに駆け込まれました。
胃の底から這い上がってくるような其れは、吐き気。
数分経って出て来られた様の顔は、真っ青で御座います。
これは、どれだけ頭の可哀相な執事でも、
飛んで行くというもので御座いましょう。
「ちょっと、大丈夫?」
「ええ。多分仕事のし過・・」
「悪阻かな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「僕の子だね」
「(脳味噌が腐ってるのね)恭弥」
「なんだい?夜の営みくらい我慢するよ」
「(もう爛れ落ちているんだわ)・・・恭弥」
「勿論、をおかずにぬ・・「お医者様を呼んできて頂戴」
「嗚呼、そうだね」
「(脳を解剖させましょう)」
スキップでもしそうな勢いで出て行った執事に、
哀れみの視線を向けることを忘れずに、
ご自分で熱を測られて、
症状を風邪だと断定された様は、
早々に布団に潜り込み、
ヒバードという癒しを枕元に置かれ、
静かな眠りにつかれました。
翌日、
何故だか鳥籠に押し込められたヒバードと、
自分の布団に頭を乗せている執事。
何箱も転がっているグレープフルーツジュースは、
見ない振りをして。
「こんな事したら、恭弥が風邪引くわ」
自分の身体なんて顧みない、
一晩中付いていてくれたのだろう執事の、
柔らかくてさらさらの黒髪を撫でられたのでした。
(名前は何にしようか?)
(黄泉への誘いでどうかしら?)