ただそうそれは、
起きるべくして、起きてしまったもの。
いや、
起こされるべくして、起こされたもの。
どちらにしても、君は、
君達は、
過ちを犯すことになる。
「今日は、転校生を紹介する!」
朝のSHR。
3年にあがって、
獄寺君が離れてしまった以外、メンツは変わらずじまいで、
といっても、休み時間の度に走ってくるもんだから、
やっぱり変わらない。
「男子喜べ!!3年最後にして美人さんだ!!」
担任の声を聞いた瞬間に沸き上がる教室。
俺も、どんな人だろうと、一番後ろの席から身を乗り出した。
「どんな子かな?やっぱりツナ君も気になる?」
「えっっいやっ・・・」
「うわあ!!ホントに可愛いよ!!」
たまたま隣になった京子ちゃんの感嘆と同時に、
沸き上がった教室。
黒のボブと切れ長の目は、
何処か、雲雀さんの雰囲気に似てる気がした。
「と言います」
「は転入試験全科目満点だったからな!」
すげえと言う声が飛び交う教室の中、
いやに脳天に響く声。
こっちはリボーンみたいだ。
まるで、何もかも見透かされているような。
「席は・・・・山本の隣だ。山本」
「ここ!ここ!」
勢いよく上がった山本の腕。
かつかつと慣らされる靴。
向けられたのは、好意と羨望と、殺気。
「俺、山本武!武でいいぜ!」
「SHRは終わりだ。山本!教科書見せてやれよ!」
「分かってますって!」
「さんってどこから来たの?」
「なんで3年で転校?」
「って呼んで良い?」
「高校どうすんの??」
ずっと伏し目がちに俯いていたは、
ふと、微笑んで、がたりと席を後にした。
ざわめく教室。
「あれ、京子ちゃん?」
「きっと緊張しちゃったんだよ。あたし、さん捜してくる!」
「俺も手伝おうか?」
「いいよ。大丈夫!ツナ君、宿題終わってないんでしょ?」
「あ!!!」
「行ってくるね」
ぱたぱたと可愛らしく走って行った京子ちゃん。
やっぱり優しいんだなと思いながら、
一限目の用意を取り出した。
屋上への階段で響く靴音は、
五月蠅いぐらいに響いて、
ピエロの饗宴か、道化師の夜会か。
「さん、なんで屋上になんて」
「化猫さん?塗りたくったファンデーションが滑稽だよ?」
「どうしてそんな事言うの!!」
「人殺せそうな殺気向けておいて、よくそんな台詞が吐けるね」
「・・・・・・・・・」
「それに、誰も見てないけど?」
「今まで顔だけの女の子ばっかりで飽き飽きしてたの」
「それはそれは。女王様を楽しませられそうで光栄の至り」
「貴方、生意気ね」
「化猫と違って飼われてないから?」
飛んできた手を避けることもせず、
紅葉型に燃えた頬を、惜しげもなくさらして。
「私を侮辱したこと、後悔するから」
ばたんっと酷い音を立てて閉じた扉。
可哀相に当たられて。
君には何の罪もないのに。
「君は、何処まであたしの記憶に食い込むかな」
なびく髪を押さえて見上げた空には、
雲一つ、浮かんでいなかった。
そう、覆い隠してくれるよううなものは、何一つ。