「さて、ヒトとして、また会えたら、今度は覚えさせてよ?」
「、何処行くんだよ!」
「何処でも良いでしょ?」
「あのな・・」
「なに?隼人と逃避行でもして欲しいの?」
「ばっ!!」
誰、を、信じる、か。
決めた?
「もう、京子・・・信じられないよ・・・・」
ぱしんっ。
「なにっ!」
「馬鹿げた言葉が聞こえたから、殴ってあげたんだけど?」
隣では、もう、動けない。
だって、盤上だけが、彼女の全て。
彼女の生きる世界。
彼女が信じたのは、小さな檻の中、だけ。
「一つだけ、教えてあげる」
「?」
生まれたての赤ん坊に。
「誰かを信じることは」
イコール。
「自分を信じること」
だから、信じたモノを、信じられなくなったその時は、
自分も信じられないと言うこと。
そして、死んでいって。
「あの協定は破棄できねえぞ」
「なんだ、知ってたんだ」
「当たり前だろ。アルコバレーノをなめんなよ?」
「破棄するつもりはないよ」
「なら、並盛りにいても問題ねえ筈だぞ?」
「問題大あり。だってあたしは、彼とはじめましてなんだからさ」
もう少し、人として成長したら、
また、会いに来てあげても良いよ。
「隼人」
「なんだよ」
「10年後、また会おうね」
「は?」
踵を返して、すたすたと歩く。
ゲームが終わったら、駒は戻さないとね。
箱の中に。
「ちょっと待てよ!!」
「なに?」
「お前は誰を信じるって・・・」
「ナニも?」
信じないけど?
「なっ!」
「それじゃあ・・・」
そ。
だからあたしは、死んでるんだよ。
「バイバイ」
残した笑顔が、
ナニに見えただろうか。
信頼や信用を、得たいと思うのは、
やっぱりヒトの性で。
なのに、彼女は求めていなくて。
信頼も、信用も、与えないから求めない。
縋ることも、足掻くこともなく。
「背中を預けることと、信頼は違うぞ」
「何言ってんだよ・・・」
「授業が始まるんじゃねえのか?」
ぽっかりと開いた机に、
誰かがいた痕跡は、なかった。