彼女が、がいなくても、

時は、勿論過ぎていくモノで。

あれから、何年、経っただろう。




「さっさと書類仕上げろよ。ダメツナ」

「分かってるよリボーン!それにもうすぐ終わるから!」




黒いスーツを着こなして、

革張りの椅子に貼り付けになる毎日。

活字と睨めっこは、もう、日常だ。




「ツナ君、入るね」

「どうぞ」

「お茶、淹れてきたの」

「ありがと」




壊れた、ままで、動き出した。

湯気の立つ紅茶のカップが、ゆらり。

この世界にやってきて、という人物について、

表面を嫌でも知ることになったから、

黒光りする、机の上のトリガーを見やれば、

思い出してしまうのだ。



過ち。



彼女はきっと、笑い飛ばすのだろうけれど。

枷となって、今も。




「10代目、任務完了いたしました。報告書です」

「そこに置いておいてくれる?」

「お帰りなさい」

「てめえにお帰りなんて言われる筋合いねえ」

「獄寺君!」

「すみません。自室に戻ります」




亀裂の入った縁が、元には戻らない。

やり直しのチャンスを与えたのは俺で、

与えて欲しかったのも俺だ。




「なんだなんだタコヘッド!ただいまの挨拶もできんのか!」




極限ぷんすかだぞ!!

そう言う笹川兄を止めるように、妹が立つ。

忘れたわけではない筈なのに。

けれども、誰かを責める資格を有するモノは、

誰一人として此処にいない。

ゲームに負けたモノか或いは、

ゲームを知らない者しか居ないのだから。




「そういや、ミルフィオーレに不審な動きがあるって言ってたな」

「うん。合併してから凄い勢いで力を付けてるよ」

「そこから晩餐会の招待状が来たんだぞ」

「知ってるよ。考えてる」

「断る必要はないだろ」

「リボーン・・・・曲がりなりにも敵対してるんだけど?」




会合ではなく、食事会。

それも気になる。

そして、筆跡も何もない、作られた文字による招待状。




「返事は急げよ。今日までだからな」

「うんそ・・って、えええええええ!!??」

「見てないのが悪いんだぞ」

「教えてよ!もう!!」




がさがさと手紙をあさりながら、

そう言えば、彼女がさよならと言った日も、

こんな風に晴れ渡って、雲一つ無い日だった気がする。




「綱吉」

「雲雀さん、ノックくらいして下さい」

「ボクに命令する気?咬み殺すよ」

「(一応、上司なんですけど・・・)」

「それより、あの晩餐会、どうする気?」

「珍しいですね。雲雀さんが気にするなんて」

「別に」




皆、感じ取っているのは、

肌に刺すような、殺気。

その招待状を受け取ったときから、

毎夜夢に出てくるのは、自分達に人の絶望を与えた彼女。

頭から離れない、瞳と声。




「もう少し考えてから守護者全員に・・」

「今答えて」

「いっ今ですか?!」

「さっさとしてくれない?君と違って暇じゃないんだ」

「いや、あの、俺もそんなに暇ではないというか・・・」




今日は約束の10年後だということに、

気付いているのは2人だけ。

誰からの誘いかなんて、分かり切っている。




「どうしよう・・・リボーン」

「何年経ってもダメダメだな」

「五月蠅いなあ」




貴方は、誰、を、信じるの?




「受けますよ」




自分を。

と決めた、あの日から。