正装して、守護者が揃ってリムジンに腰を据える。

手を振る京子ちゃんに、笑顔を返して。

今はもう既に、適地の目の前だ。




「ボンゴレ守護者の皆様、ようこそお越し下さいました」

「お招き感謝するよ」

「どうぞこちらへ。
嗚呼、銃器類は申し訳ありませんが預からせて頂きます」

「はあ?」

「獄寺君」

「ちっ」




敵地に丸腰で乗り込んでくる、

ただの莫迦だと思われるのだろうか。

それでも良かった。

なんの為に会いたいかなんてないけれど、でも。




「いる・・・かな」

「分からない」

「楽しみですね。ボンゴレを其処まで貶めることが出来る女性とは」

「骸、騒ぐなよ」

「クフフ、約束しかねます」

「ボクは勝手に行くから」

「あ、ちょっと雲雀さん!」




見たところ、なんの変哲もない、立食ビュッフェ。

所狭しと、高級そうな料理が並ぶ。

本当に、ただの、食事会なのだろうか。

雲雀が、群れるのは嫌いだと、

集まりの中から外れようとした瞬間だった。

みんなが感じ取った、あの、何もかも見透かしてしまう視線。




「久しぶりだね」




パンツスーツを着こなした、

髪の色も瞳の色も全く異なる彼女が其処にいた。






「うわ。隼人の癖して身長伸びてる」

「あのな・・・」

「リボーンもなんだかまともになったんだね」

「うるせえ。撃つぞ」

「どうせ当たんないでしょう」




シルバーブロンドのパーマがかったミディアム。

瞳の色は、透けてしまいそうなペリドット。




「何?あさりボス」

「べっ別に・・・」




本当に、どうでも良いのか。

10年前にあったことなど、既に記憶から無くなった様。

山本やお兄さん、雲雀さんでさえ、

その場に立ち尽くしたまんまなのに。




「それにしても、女狐くさいから、これ以上近寄らないでね?」




女王様、許しちゃったんだ。

ほんと、優しいったら。




「じゃあ、どうしろッて言うんだよ!」

「何が?」

「だからっ!」

「あたし、悪いなんて一言も言ってないけど?」

「っ!!」

「ねえ、人になった感想、後で教えてよ」




10年で経験してきた、

人としての記憶を。




ちゃん、困るよ。勝手にそっち行かれちゃあ」

「申し訳ありませんね。my load」




怯えちゃって、顔も合わせられないって表情。

全部自分が悪いと認めてしまって。

少しでも人間くさく、自分は悪くないと想って欲しいのに。

もっと果敢に立ち向かってきて欲しいのに。

嗚呼。面白くない。