「ん・・・」
出血多量で倒れるなんて何年ぶりだろうか。
走って走って、
ボンゴレ敷地内を抜けたことだけしか覚えていない。
けれど目の前に拡がるのは、
日本式の天井。
かぶせられた布団は床と密接している。
「嗚呼、痛い」
体中がずきずきする。
流石リボーンがついているだけの事はあるな。
まあでも、これで特攻の自分の仕事は終わったのだから、
もう、要らないだろう。
「起きたの」
「敷地から出た筈なんだけどな」
「野垂れ死んでたからね、此処に運んだんだよ」
「それは御世話をかけまして」
「別に」
ただそう、君は幼すぎただけだ。
「で、なんで此処に連れてきたんですか?」
「意味はないよ」
死んで欲しくなかった。
話を聞いて欲しかった。
自分の存在を確かめたかった。
「それより、君は何で此処にいるの」
「奇襲かけられたって、聞いてないんですか?」
「君一人で?」
数秒経って、笑い出した目の前の女に、
ボクは顔をしかめるしかなかった。
何がおかしい。
君に笑われると、全て間違っているような錯覚に陥る。
「やっぱり貴方は、子供だっただけなんだ」
「何其れ」
「ゲーム好きだった頃の話」
「あれは・・・」
自分が正しいと思って生きてきた数十年を、
たったの一掴みで崩された瞬間。
だからこそ改められた更に十年。
「其処をおかしいと思わない赤ん坊が、
まだ沢山いる中で、凄いね。尊敬するよ」
「心にも思ってないこと言わないでくれる?」
「それじゃあ、お詫びに良いモノ送ってあげます」
「その傷じゃまだ・・」
「誰に向かって口聞いてるの?」
幾弾もの銃弾を受けたはずなのに、
平然と、凜と、立ち上がる彼女が、とても眩しい。
やはり自分は強くなりたいのだと、
強くなるために存在するのだと思える。
「聞いて!聞いてよ!!」
「ちゃんを殺せなんて、一言も言ってないんだけど?」
「私の所為じゃないわ!兄が勝手に発砲したのよ!」
「勝手に、ねえ」
「信じて、御願い・・・」
ぽろぽろと絨毯に、汚いシミをつくってゆく女。
嗚呼、こんな事なら、こんな女、
さっさと殺しとくんだったな。
ちゃんがいたから面白かったのに。
もう、要らないや。
「でも、でも、奇襲は成功したでしょう?
ボンゴレは沢山の兵力を失ったわ。だったら・・」
「ボンゴレなんて、どうでも良いんだよね」
「は?」
「ちゃんがいれば、其れで良かったんだよ」
「やめて、やめ・・殺さないで・・・・」
鉄の塊はけっして、
遊びに使って良いモノではないというのに。
扉を開いたその先に拡がっていた、
なんとも滑稽な2人の姿に只、
は嘲笑を、送るだけ。
「只今帰りました。my load」