「まさかお前が転校してくるとはな」
「あさり一家の将来が気になってさ」
「嘘付け。お前等、自分達の事以外興味ないだろ」
「さて、どうかな。状況が変わったんだよ。リボーン」
「そうか」
「聞かないんだ」
「はったり教えられても時間の無駄だからな」
「流石リボーン」
屋上に吹き抜けた風が帽子を飛ばす。
「それじゃ、行くよ。女王様がお待ちだからね」
「・・・・・・・無理すんなよ」
「誰に向かって口聞いてるわけ?」
開けた扉は何への誘いか。
静かにとは言い難く閉まった扉の向こうに消えた昔馴染みが、
いや、その昔馴染みに今から関わるであろう輩の将来が、
塵のように飛んでいかないように祈った。
足取り軽く、スキップでもしそうな勢いで教室の扉の前に立つ。
の口からこぼれるのは、鼻歌。
ざわつく教室とは、打って変わって対照的な、
軽やかな歌。
がらり。
扉を開けた途端に静まった教室に、
は一層笑みを濃くした。
「さん、君・・・・」
「なに?」
「なんで京子をぶったのよ!!」
「ぶつ?そんな生易しいもんじゃねえだろ」
「目、赤く腫れてたよね!」
「体育のテストももうすぐなのに・・・」
「最低だな」
「さんにも何か理由があったんだよ!責めないであげて!」
「京子ちゃん!!」
「笹川の教科書こんなにしたのもお前かよ」
「さて、身に覚えがないんだけど?」
がんっ。
「ツナ、なんで止めるんだ?」
「まださんがやったって決まった訳じゃ・・」
「お前は笹川を疑うのかよ!!」
「十代目に手あげるとは良い度胸じゃねえか、野球莫迦!!」
「違うクラスのお前は黙ってろ」
「果たす!!」
誰を信じるか。
誰を優先させて信じるか。
そんな事、どうでも良い。
「おい、話は終わってねえ」
「そっちが勝手にそらしたのに、あたしの所為にされてもね」
優雅に座って授業の準備に取りかかるにつかみかかる。
それをまた綱吉が止めに入るの繰り返し。
「さんの所為で、京子ちゃん、こうなったの?」
「聞いてくれるなんて優しい」
「べっっべつに!!」
向けられた微笑みには邪気なんてなかった。
脳天を貫く声はそのままだけれど、
けれど信じられなかったんだ。
彼女が、転校してきてすぐの彼女が、
こんな、虐めまがいのこと・・・・。
「でもこれじゃ、あさり一家は壊滅的・・・・だね?」
「てめえ!何処のファミリーのもんだ!!」
「何処でしょう。答える義理はこれっぽっちもない」
先程とは違う不敵な笑みを浮かべ、
山本と黒川に支えられながら立っている、
片目に眼帯をした女王様を見据えた。
「十代目!こんな奴俺が直ぐに果たして・・」
「ボスに忠誠的なのは合格。でも室内でダイナマイトは不合格」
「なっっ!!・・・・え?まさかお前・・・・」
「で、女王様はなにをご所望かな?」
切り落とされた導火線。
見覚えがあり過ぎる切り口に、焦る。
自分は、なんという人間に刃を向けたのだろう。
滑稽で。
滑稽すぎて。
嗚呼、笑える。
でも、君の名前はもう、忘れちゃったよ。
女王様。
「笹川に謝れ!!!!」
「部下の命令より先に、目上の人の質問に答えないとね?」
「っ・・・・!!」
「君達が望んでる答えをあげる」
しんっと静まりかえる教室内。
チャイムの音すらかき消して、彼女はそっと答えたのだ。
「あたしの所為でこうなった」
乾いた音が響いた。