「おかえり」

「女王様をご所望で?」

「まさか。遊んでただけ」

「そうですか」

「落とし物は届けに行かないとね」

「離して!離してよ!!」




連れられていく女王様。

残るは、キング。




「離してって言ってるでしょう!」

「黙ってくれないかな?耳障りだから」

「車を用意します」

「お願いするよ」




ハンドルを握りながら、

終演の見えたゲームに溜息をつく。

今回は本当に、溜息しか出なかった。

なんだろう。

この空しさ。

縁を確かめた10年前。

縁を切るために使った10年の月日。

息苦しさから解放されるための今。




「着きましたよ」

「ありがと」




口を塞がれ、眠らされた女王様。

とらえられた女王様。

悦っているキングの終わりももうすぐ。

さて、チェックメイトはいつかける?




長い廊下を歩きながら、

やはり人質がいれば攻撃しないように命じられているらしい、

銃を持って震えているポーン。

塔はもうすぐ壊れるよ。

キング気取りのピエロさん。




「此処で間違いないんだよね?」

「あってますよ」

「じゃ、失礼しようかな」

「はい」




ノックされたドア。

開いた先の、目を見開いた人。

そして、ヒットマン。




「京子ちゃん!!」

「なんのようだ」

「うん。遊ぼうと思って」

「っ!!」

「10代目!!」

「ツナ!!」

「何事です?」




ぞろぞろぞろぞろと。

ちゃんと陣をつくること覚えたみたい。

それで良い。

それで。

集まって、悩んで、

どれが正しいのか、自分を信じて。




「落とし物だよ」

「京子!」

「話なら、聞くけど?」

「へえ。ちゃんの言うとおり面白い子だね」

「京子ちゃんに何したのかな」

「そっちが誘ってきたからのってあげただけなんだけど」

「なん・・・だって?」

「見張りの2人とかさ、この女が持ってきてくれんだよね。
それも知らないでちゃんに怪我させるし、離婚もしたんだって?」

「そんな・・・・」




また、また俺達は間違えたのか。

震えるみんなの手が目に入る。

始めてしまった。

だけど後悔はしない。

そう決めた。




「それと今の状況は関係ない」

「へえ、やっぱり面白ね」

「此処から出て行け」

「それは聞けない相談かな。とりあえずさ、ちゃん?」

「はい?」

「此奴等殺してよ」




外されたセーフティーレバー。

かちゃりと死への足音が響いた。

それと同時に構えられる、守護者達の鉄の塊。






「何?隼人」

「いや、やっぱなんでもない」

「そ」

「早く終わらせて、お茶でも飲もうよ」




悲しげに笑った君の顔。

忘れるはずがない。

初めて会った時に聞いた、最初で最後の君の本音。

扉に向かっての一歩。

それが合図。




「yes my load」




一発の銃声が、響いた。