「お前と初めて会った時もこんなだったな」

「そうだっけ?良く覚えてるね」

「覚えて、ねえのか」




また、あの、寂しそうな笑顔。

何時間か静寂で過ごしたのが嘘みたいだ。

ずっと、君を傷つけていたような錯覚に陥る。




「わりい」

「事実だよ」




撫でられた髪。

君が好きだと言った髪。




「隼人はさ・・・やっぱいいや」

「なんだよ。言えよ」

「頭良いなと思って」

「はあ?」




いつだって女王のことを考えて動くキング。

護るためなら自分を投げ出して、

盗られるくらいなら、負けを認められる。

だからこそ、一緒には居られないんだけどね。




夕飯を告げに来たのだろうリボーンが扉を開けるのと、

が窓から飛び降りようとしたのと、

獄寺が手を伸ばしたのはほぼ、同時だった。




「逃がすかよ」

「それでこそ右腕だぞ」

「離して」

「五月蠅え」

「答えになってない」

「抱えて来い」

「分かりました」

「離してって!」




が叫ぶ所なんて、記憶にない。

焦っているのだろうか。

彼女が。

何処にいたって、何をしたって、

いつも冷静で笑っていた彼女が?

いや、嘲笑って、いたのか。




「離さねえって、言ってんだろ」

「一緒には居れないんだってば」

「誰が決めたんだよ」

「あたし」

「黙ってろ」

「リボーン嫌い」

「聞き飽きたぞ」




泣きそうに真っ赤な顔の彼女。

2人の笑みがこぼれる。




「あ・・・・」




長々と用意された食卓。

まるで裁きを受ける前の罪人のように立っている守護者達。




「何やってんだお前等。立って飯食う気か?」

「違うよ!」




言いたい事なんて、手に取るように分かる。




「「謝りたいんだ」」




被ったアルトとソプラノ。




「意味のない言葉は要らないよ。あさりボス」

「だけど!!」

「要らない。許して貰いたいなんて考え捨ててよ」

「それは、許して貰えないって事?」

「許して欲しいの?」




欲しくない癖に。

自分の所為じゃないって思ってる癖に。




「違う。許されないとか許されるとかじゃなくて、
自分本位かもしれないけど、終わりにしたいだけだよ」




嗚呼、置いて行かれていたのは自分なのか。

終わりにするとは、

忘れるのではなくて、

次に、先に行くということ。




「そっかあ」

?」




また涙が溢れる。

何故だろう。

記憶したまま、先に進める彼等が羨ましかったのだろうか。

それとも、そんなに簡単に終わりを告げてしまえる残酷さに、

悲しさを感じているのだろうか。




「どうでも良いとか言いやがったら殺すぞ」

「やっぱ嫌いだ。リボーン」

「聞き飽きたって言ってんだろ」




あたしは結局、誰かの記憶に残りたかっただけなんだ。