捨てられた、靴。
壊された、靴箱。
埋められた、教科書。
破かれた、体操服。
落書きされた、机。
添えられた、花。
殺された、命。
「何、してんだよ」
「殺されたあたしの持ち物のお墓作ってるんだよ」
「殺された・・・って」
「どんなものだって、あたしのモノになった時点で、
あたしの分身なんだから」
弔ってやらなくちゃと笑ったはまるで、
マリア。
だから、自分の分身を自分で痛めつける女王様は嫌いだ。
そう言った、彼女は、まるで・・・・・。
「腕」
「昨日の放課後、あさりのバッド使いに殴られちゃってさ」
「お前なら避けれただろ!」
「平気だよ。痛くないから」
「そうゆう問題じゃねえ・・・」
「優しくなったのは、あさりボスのおかげ?」
「っ!!!」
もう1つ小さな穴を掘って、殺された命を埋める。
自分の分身の隣に。
「・・・・俺・・・」
「見つかると、厄介、なんでしょ?」
「ちがっ!」
「違わないね。あたしを殴るあさりボスの隣で、
悲痛そうに顔ゆがめてたくせに」
「・・・・・もう、転校、しろよ」
「やだね。女王様がご所望じゃないから」
「・・・・・・・・笹川」
「なんだ、分かってたんだ。流石隼人」
気丈に立って見せるに、俺は何も言えなくて。
だってあいつは、俺よりも格段に強いから。
だから・・・・・・。
「どうしたらいいんだよ」
「今まで通り」
頬に触れるだけのキスを送って手を振る。
屋上から来いと言う視線を受け取ったから、
足早にそちらへ向かった。
授業が始まるまであと20分。
「風紀?」
「君だね?この頃並盛の風紀を乱してる、」
「嗚呼、あたしが来た事で乱れちゃったんですか。
それは、本当申し訳ない・・・でも、もう何回も乱れてるんでしょう?」
「五月蠅いよ。風紀を乱す奴はボクが咬み殺す」
「はは。あさり一家って、好戦的な人多いんですね」
飛んできたトンファーは、受けてやる必要なんてないから、
さらりと交わして、とりあえず鳩尾に一発。
綺麗な人の顔を傷つけるのは嫌なので、横腹にもう一発。
「やるね」
「それはどうも。お褒めにあずかり光栄の至り」
「でも、出てってもらうよ。この並盛から」
「ん〜欲に流されるようには見えませんけど、
何でつられてるんですか?金?女?将来の約束?」
「君に教える必要はないよ」
「ごもっとも」
「それより、どうして否定しなかったの?」
「あたしの所為で風紀が乱れてるのは否定しませんよ。
貴方一度も、あたしが風紀を乱しているなんて言ってないから。
否定する要素が一体何処にあるって言うんですか?」
殺気を飛ばしてやろうかとも考えたが、
そうしてしまっては面白くない。
動かなくなってしまっては、全て、面白くない。
「もう、来ないでよ」
「嫌ですね。だって、楽しいですから?」
「独りが?君、相当変人だね」
「独り?あたしがいつ独りになんて?独りなのはむしろ、
この学校に蔓延ってる彼等なんじゃないんですか?」
教室の窓から丸見えの、
教科書を切り刻んでいる姿や、
校庭にまた、命を狩りに来ている姿が、
やっぱり至極滑稽で。
「嗚呼、分かりました。ゲームがお好きなんですね?」
「嫌いじゃないよ」
「チェックは、いつかけましょうか」
「僕がチェックなんてかけさせると思う?」
「生半可ではないと言うことだけは確かです」
本当はもう、
キングなんて盤上にいない事を、
彼等はいつ気づくだろうか。
だからもう本当は、チェックメイトなんて必要ない。