「なあ、そろそろ学校来たくなくなってんじゃねえの?」

「というか、ここまでしてるのにどうしてまだ、京子ちゃんを!!」

「違うよツナ君!!もう止めよ!!!」

「京子ちゃん、身体にさわるから」




屋上へ進む扉の前で、ひゅうひゅうという隙間風を聞きながら、

嗚呼、刀傷がひりひりするな・・・。

なんて。




「何とか言えよ!!」




今度はまだバットのままの凶器が振り下ろされる。

常人なら、肩がどうにかなっていてもおかしくない力で。

鈍い音が響いた。




「京子ちゃんこそどうして庇うの!?」

「そうだぞ!!極限訳が判らん!!」




ストレート。

その次は蹴りで腹部を痛めつけて、

立てなくなったところを、ほら、全員で蹴るんだよね。

なんて、一変通りで分かり易い。




「男に襲わせるとか・・っっっっ!!!!」

「ほんっと許せない!!」




何度も何度も殴られて、

それでもの記憶の内に、

彼等の暴力は残らない。

だって、痛くないから。



どうやら女王様は、

男数人に襲われそうになったところを、

命からがら逃げ出して、車に轢かれそうになり、

腕を脱臼したんだと言う。




「一つ教えてあげようか。女王様」

「まだ喋る元気があるのか」

「お前ほんと学校止めろよな!!」

「気持ち悪い」




笑顔が歪む。

その顔こそが。




「嘘を重ねれば重ねるほど、崩れた時が面白いんだ」

「それはお前のことだろ!!」

「死ぬ気の炎か・・・くくっ。あさり一家も、ホント終わりだね」

「黙れ!!!」




振り上げられた手が、

今日も今日とて一緒に来て、

悲痛そうに顔を歪める、嵐の守護者に・・・・。

ぐらり。




コマ送りの影像が、流れる中で、

咄嗟に手を伸ばしたのはたった1人。

そう、たった1人だけ。




古びた階段に響いたものすごい音は、

学校中か、はたまたその辺りの民家にも、

聞こえたのではなかろうか。

ポーンなんて必要ないんだ。

あたしが必要としてるのは、肩を並べて歩けるキングだけ。




!!!!!!」

「五月蠅い。頭に響く。折角、名前呼ばないでいてあげたのに」




台無し。

そう笑った彼女にほっとして、

そっと抱き起こしてみれば、




ぬるり。




それは、掌にべったりと付いた赤黒くて、

見慣れすぎているもので、

ぴちゃんっとはねた其れは、彼女の頭に戻ることはなくて。




「くそっっ!」




もう、なり振りなんて構ってられなかった。

とにかく、目の前の君が死なないために、

抱き上げた身体の細さや、制服の影から見え隠れする青痣も。

傍観を決め込んだ自分を叱咤した。

殴ってくれと頼みたかった。

けれどきっと君は笑うんだ。

どうしてあたしがそんな面倒くさい事しなくちゃなんないの。と。




笑って。

話して。

目を開けて。

君に付きます。




遠のいていく足音を、

只、呆然と見詰めることしか出来なかったのは、

ポーンの集まり。