走って、走って。

口の中に血の味が拡がるくらい。

出来るだけ振動させないように気を配った、

腕の中のは、ぐったりしていて。

いくらだって、あれだけ殴られた後で、

あんな。あんな。




「シャマルっ!!!!」

「おいおい何が・・・っ!」

を!を助けてくれ!!!」




奪われた彼女の手を離すことなんか出来なかった。

手当てされていくの名を、

応えてくれないことくらい判っていたけれど、

けれど、呼ばずにはいられなくて。




「良い。平気」

「嘘付け」

「平気だって。あたしが言ってるんだから、平気だよ」

!!」

「莫迦隼人。なんであたしの名前呼んだの」

「なんで!?それはこっちの台詞だ!!」

「ここ、一応病室」

「もう、あいつを追いつめる証拠くらい持ってんだろ!?
なのに、なのになんで!!なんでまだ殴られてんだよ!!
の考えてることなんか判んねえから!!
判んねえから止めなかったけどっっっ!!!くそっっ!!」

「隼人、落ち着いて」

「落ち着いてられっか!!お前死ぬとこだったんだぞ!!」

「誰が死ぬって?」




髪が靡くほどの殺気は、

本当に頬でも切ってしまいそうな勢いの。

誰に向かって、ダイナマイトをあげたと、判ったあの日から。

俺は、何一つ変わってなんていなかったことを、

今、気付いた。




「もう、ボンゴレは抜けるっっ!!」

「へえ。自分に優しさを教えてくれた人に仇を売るわけだ。隼人は」

「っ!!」

「落ちるトコまで落ちる手前で救ってくれた人を、無碍にするんだ?」

「んなこと言ったって!十代目は間違ってる!!」

「隼人其れ、一度でも口にしたの?」




今のままでと、彼女が言ったからか?

怖かったんだ。

彼に付かないで行こうと決めることも、

彼女に付いて行こうと決めることも。




「あたしを裏切らないでよ」

「・・・・・・・・無茶言うな」

「隼人はあたしを裏切らない」

「卑怯者」

「お褒めに預かり光栄だね」

「褒めてねえし」



「おじさんの事忘れて話進めるなよ」

「嫌だね。忘れるね。あたし嫌いだから」




エゴイスティックな大人は。




「というか、ホントにちゃんと修行してるの?
全力で来てこれだけとか、かなり期待はずれ」

「その辺はまだまだだからな」

「リボーンさん!!」

「お前等の殺気を育てるために呼んだんだぞ」

「それ、聞くだけでも胸くそ悪いんだけど」

「でも事実、育ってるだろ?」

「あれで育ってるの?笑わせないでよ」




あんなのが殺気だとは認めない。

悔しいなら、殺す気で来て下さいね。

女王様。






「何?」

「お前、いつまで遊ぶ気だ」

「そうだな・・・ポーンが自滅するまで」

「それはいただけねえぞ」

「リボーンはポーンが壊れると何になると思う?」

「ただの石の塊だ」

「違うよ。全然違う」




自我を持たない只のコマが壊れるその時は。




「明日、隼人の下駄箱が殺されてるに一票」

「のぞむところだ」

「ダメダメ。盤上で反転は出来ないから」

「あのな」

「頭の良い隼人は気付く筈だよ」

「何にだよ」

「内緒」




学校中が、彼女を嫌う。

その理由は何だったか。

笹川京子を殴ったからか。

違う。

クラスだけで十分の筈。

ならどうして、学校中が彼女を嫌っているのか。

意味もなく。