例えば其れは、いつも見ている影で、
必ずと言っていいほどトラブルへの引き金になるから、
追いかけた。
追いかけなければ良かった。
「そろそろ止めにしろよ」
「リボーンさんの言うとおりだ!今日もこんな・・・こんな傷つくって」
「隼人、五月蠅い。リボーンも聞き飽きたよ。それ」
「なっ!」
「折角忠告してあげたのに、なんであさりボスの所に戻らないかな」
やっぱり莫迦だったの?
と、何気なく、が聞く。
「もう材料は十分すぎるほど揃ってるだろうが」
「いつ終わりにするかはあたしが決める」
空中に放り投げられたUSBメモリー。
「電波妨害なんて、あたしには通用しないのにねえ」
学校中にちりばめられた、
携帯云々、電子機器の作動をおかしくする波動。
職員室、校長室、放送室、コンピューター室など、
まあ、やられていないところもあるのだろうが。
「風紀委員か。可愛いよ。ホント」
「足下すくわれるぞ」
「誰に向かって口聞いてんの?2回目」
「・・・・・・」
「ボスや守護者が使い物にならなくなるのは、
あたしの所為じゃなくて、弱い彼奴等の所為だからね」
「判ってるぞ」
「隼人」
「なんだよ」
「それ、頂戴」
食べかけの焼き蕎麦パンを指して言う。
なんて、仲の良い友達の昼休みに過ぎない。
「笹川・・・・・くそっ!」
「はい。ストップ」
「おい・・・」
「隼人の拳が可哀相でしょ?」
コンクリートと喧嘩する気?
増えた気配に気付いていたのは、
2人だけ。
「じゃ、あたし戻るわ」
「俺も・・」
「莫迦。簀巻きにして屋上から吊さないと分かんないわけ?」
「・・・・・・・・・後から行く」
「さっさとあさりボスの元に戻るんだよ?これ以上疑われない内にね」
「後から行く」
語気を強めた。
色々、色々考えて、
結局、彼は間違っていると思ったから。
言わなくたって、察して下さると、
やはり少しばかり・・・・・。
信じてるなんて、そんな勝手なこと言わないけれど。
とにかく、自分のエゴだった。
この方ならと、初めて思った人だから。
「後で、どうしてなんて嘆いたら、捨ててやるから」
そう言い残して、屋上を後にする。
開かれた扉にびくつく肩。
逃げないと、いけないのに・・・何から?
こつこつと近づいてくる足音は。
終わりを告げる前奏曲。
「貴方は何を信じるの?」
さして興味も示さずに、
目の前を通り過ぎていった彼女を、
ただ呆然と、見つめていることしかできなくて。
何、を、信じる。
「っ!!」
判らない分からないワカラナイ。
時間か、繋がりか、愛情か。
友か、家族か、他人か。
ナニ、を、信じる。
そして、進む。
非難囂々、浴びせられながら、
しゃんっと立って歩く彼女は、
まばゆく光を発しているようで。
そう望んでいるのは自分なのだと気付いたのは、
チャイムが鳴り響いた後だった。