気付けば其処は、全く知らない部屋でした。
『こんなハウスメイドさらってきてどうすんだ!!』
『近頃、ヴァリアーの幹部共が執心してるって聞いたんすよ!』
『だからってなあ!彼奴等暗殺部隊だぞ!?』
『でも・・・・』
『こんなハウスメイド助けに来るわけねえだろうが!!』
「(・・・・・もしかしなくともさらわれた??)」
『一応、脅迫状送っときましたよ』
『上手くいきゃあ情報が手に入る』
『失敗しても女で遊べる・・・か』
「(もうすぐ3時・・・・昨日、ダークチェリーパイ焼く約束したのに・・・)」
手錠を掛けられ、ベッドの上。
床に置かれなかっただけマシというものか。
脚が縛られていないので、しびれなくて良かったとか、
もう、緊張感の欠片さえないのではと疑ってしまう。
「(こんな事なら、マーモンの私物盗んどけば良かったかな)」
『喜べ?お前みたいなハウスメイドにも役割があるんだからよ!』
『なあ、犯しちまおうぜ?』
『支障ねえだろ』
『だな』
恐れがないのは、きっと言葉が分からないからだ。
言葉が分からないと、自分を孤立させる術になるから。
が思うことは一つだけ、
何故、マーモンともっといちゃこらしなかったかだ。
「え?」
『大人しくしてろよ?直ぐ気持ちよくなるからな』
『陳腐な決まり文句吐いてんじゃねえよ!』
直ぐに理解したのは、日本語でいくら叫んだって、
いや、イタリア語が話せたとしても、
今の状況を打破できないことだけ。
外されていくブラウスのボタンを見つめながら、
自分の情けない身体を見て、
彼等が吐き気を催さないかが、
心配だな・・・・なんて。
「の清い身体に触るんじゃないわよ!キモ男共!!!」
扉を文字通り破壊して飛び込んできたルッスーリアに目を丸くした。
どうして?
私を、助けになんて・・・・。
「なっさけね!」
「よっ妖美だ」
「死んでろ。お前」
「これでも羽織っとけえ」
「大丈夫?!!あの男共は、
もう使い物にならないから大丈夫よ!!」
(((((鬼だ・・・・)))))
「ボス・・・」
「ふん」
「何拾い食いしたんですか?」
「素直に礼が言えねえのか?」
ただ、そこで笑ってる彼等に安堵した。
怖くなんてないと、
助けなんて来ないから、
諦めてしまえばどうとでもなるって、
そう、思ったのに・・・・。
「何、泣いてるんだい?」
「・・・・っこ・・わ・・・った」
「泣くなあ」
「うわぁぁぁぁぁん!!」
「う゛ぉ゛ぉぉいい!!」
「あ〜あ。泣かした」
「カスが」
「ちょっとスクアーロ」
スクアーロをぼこり始めたみんなの隣で、
はただただ子供みたいに大泣きして、
しゃっくり混じりに、
通じたのか通じてないのか分からない御礼を言うことしかできなかった。
「・・・んっ・・・・・あれ?」
「あら、起きた?」
「ルッス姉さん」
「ほら、ミネストローネ。落ち着くわよ。飲みなさい」
「ありがとうございます・・・」
どうしてなんて、聞いてもきっと、
莫迦じゃないのと返されそうな気がする。
誰も此処じゃ、答えを教えてくれないから。
「ごめんなさいねえ」
「ルッス姉さんが謝る事なんて1つもないです。
私が、もっとちゃんと、ナイフ、練習してれば・・・・・」
「分かってるじゃない」
「はは。厳しいなあ」
「本気でね」
「はい」
ぽすりと頭に置かれた手は、
やっぱり大きくて、とても安心した。
「じゃ、お邪魔虫は退場するわv」
「え?」
「鼻血は吹き出さないでね?」
「私も人間ですよ?」
開かれた扉。
入れ替わりに入ってきたのは、
君で。
「明日からスクアーロに言って、練習時間倍だね」
「はい」
「ナイフもいつも持ち歩いてないと意味ないよ」
「はい」
「・・・・・・」
「はい」
「心配かけないで」
「・・・っはい!!」
胸元まで開いたシャツ。
怒りは、いとも簡単に沸点を振り切った。
不安そうな君を撫でることも、
自分のコートを掛けてやることも、
抱きしめることも出来ないからせめて・・・・。
「むむっ。心配だね」
「そうですか?」
「仕方ないから一緒に寝てあげるよ」
「・・・・・・・頑張ります」
「頑張って」
(なんだぁ親子にしか見えねえなあ)
(マーモンに殺されるわよ)
((聞こえてるよ。スクアーロ死刑))