それは、運命を変える(かもしれない)一本の調べ。



なんて、別に、可愛いものでも切ないものでもない。

ただ、やっぱり、少しばかり、

後ろめたいものがあったのも事実だから。

ルッスーリアと買いに行った、

クローゼットに収まりきらない服達や、

その他諸々を、

吃驚スーツケースに収めたのだ。




「・・・・・・・・・・」

「準備できたか?」

「ノックくらいして下さいよ」

「そんなこというのはお前くらいだぞ」

「普通の人は言います。普通の人は」

「オレの愛人に・・「なりません

「そうか」

「一変通りですよね。頭まで退化したんですか?

打つぞ?

確実に当たるんで止めてください




自分よりも、かなり下にある小さな身体を見つめる。

待たせてあったタクシーに、なんの戸惑いもなく乗り込んで、

過ぎ去っていくヴァリアーの敷地を見つめた。





「なんだ?やっぱり寂しいんじゃねえか」

「いえ、色々あったなと思っただけです」




そう、此処はホントに暗殺機関かと疑うほど、

平和ボケした毎日だった。

一番最後に街に降りてきた記憶は新しい。

あの後ホントに鼻血で貧血死しそうになった。




「着いたぞ」

「はい」




色んな事があったなと、思い出しはするけどやはり、

それはマーモンのことばかりで。




「搭乗まで時間がある。座ってろよ」

「はい」












「どうしたのかしらね?マーモンが呼んでも出てこないなんて。
いつも100m先のマーモンを感知するのに

「おやつまだなわけ?」

「てめえはちょっと黙ってろお」

、入るよ」

「ちょっとマーモ・・・・ン」

「・・・・・どうゆう・・・ことだい?」




蛻の殻とはこの事だろうか。

ついさっきまで、此処には人がいたはずなのに、

この数ヶ月がまるで夢だったとでも語っているような。

そんな、綺麗すぎる部屋。




「・・・・・・・ボス?」

「あいつなら出てった」




訥々と語ったその1行が、酷く頭に響く。




「どうゆうことなの?」

「彼奴が決めたんだ」

「レヴィ、ボスが君のこと愛してるってさ」

ぶぉぉすぅぅぅぅぅ!!!!!




颯爽と立ち去ろうとするザンザスに、レヴィをし向けて、

自分はものすごい勢いで、ドアを破壊した。

後ろから呼ばれた気がするが、そんな事どうでも良かったから、

振り返りも、答えもしなかった。








「そろそろだぞ」

「分かりました」




肩に乗るヒットマンを払うこともせず、

さして重たくないカバンを持ち、

搭乗ゲートへと進もうと立ち上がった瞬間だった。




ばきぃっっっ!!




「え?」




肩にあった重みが無くなる。

見間違いでなければ、今しがた横を、

ファンタズマが飛んでいかなかっただろうか・・・・。




「良い度胸じゃねえか。バイパー」

は置いて行きなよ」




見間違いではなかったらしい。

後頭部にでかいたんこぶを作ったヒットマンと、

何処かの球児よろしく、

ボールを投げた後のような格好のマーモンが、

にらみ合っている。

とりあえず、投げ玉にされたらしい、

可哀相なファンタズマを拾っておいた。




、帰るよ」

「えっと、あたしこれから沢田家にお世話になろうかと・・」

「帰るよ」




こんな時、自分が小さくなかったら、

無理矢理にでもの手を引いて、帰ることが出来るのに。

拉致に見られるかもしれないが




「でも・・・・」

捨てる気?




まあちょっと、あの子、弟を捨てる気なんですってよ。

みたいな私語きが、そこかしこから聞こえてくる。




「ごめんなさい。リボーンさん」

「気が向いたらいつでも来て良いぞ」

「有り難う御座います」




ファンタズマを肩に乗せ、

両手でマーモンを抱き上げて。




「只今帰りました」

「むっ。遅いよ」

「ごめんなさい」




帰ったら、彼の大好きな、レモンチーズケーキを焼こう。




(・・・・・モスカが走ってきてませんか?)
(逃げるよ)
(あれ?ボスがいませんね(後変態))
(気にしない方が身のためだね)
((・・・・・・合掌))