「で、どうしてボクまでここにいなくちゃならないのさ」
「その方が取り調べが早く済むからだろ?」
今も目の前で、目をキラキラと輝かせてやまないを一瞥し、
ふうっと何度目か判らない溜息をついた。
じいっとそんなマーモンを見つめるは、
はっきり言ってただの変体である。
「って言っても、全然取り調べは進まないみたいだけど?」
「そうねえ。困ったわ」
そう言いながら、飛んできた皿を手刀でたたき割ったルッスーリア。
ひゅんっと次に飛んだのはアロマランプ。
高価そうだ。
ちなみに只今、戦争・・・いや、
幼稚な、莫迦で阿呆で下らない
ヴァリアークオリティーの争いの真っ最中だ。
べしっと小気味いい音を立てて、リネンがの顔面を直撃した。
「ししっ、超間抜け」
「うっさい。黙れ少年(あたしは今、マーモンを愛でるのに忙しいの)」
「ボス!お止めくだ・・ぶふぇっ!!」
「ははっ!!!お前それでも暗殺部隊かよ!!」
「ねえ、帰って良い?」
「独りだけ抜け駆けなんてずるいわよ」
この際、喧嘩の原因などどうでもいいのだ。
なんせ、子供じみたばかげた理由なのだから。
「でもこれじゃ、日が暮れちゃうわ。
の情報は取っておかないと、これから動けないしね」
「だな。部屋移動しようぜ」
「ほら、行くわよ」
「マーモンは?」
「むっ。まだいなきゃいけないのかい?お金取るよ?」
「・・・・・・・レモネード」
「さあ、行こうかベル」
変わり身はやっっっ!!!
そんなにレモネード好きかよ・・・。
というベルの台詞と共に、瀕死状態のボス溺愛変体野郎と、
稚拙な2人をほっぽり出して、ザンザスの部屋からお暇した。
「ルッス姉さん、キッチン借りても良いですか?」
「良いわよ。レモネード?」
「それもあるけど、3時でしょ?おやつでしょ?
ルッス姉さんは何が食べたいですか?」
「なになに、料理出来んの?」
「本見たら誰でもつくれるって。つか、少年には聞いてない」
「そうね、なんでも良いわよ」
「了解です」
ルッスーリア。
なんて良い人だ。
ちょっと黒い影が見え隠れしないわけでもないかも知れないが、
自分に害がなければ良し。
さっさとキッチンに向かったは、
小麦粉らしきものやら色々、
ボールの中に突っ込んで、ぐるぐるかき混ぜちんっ。
端折りすぎだろ!!!
チョコチップとプレーンのソフトクッキー。
が気に入ってるお菓子だ。
まあ、別に自分が開発したわけではなく、
レシピを拝借しただけなので、自分は全く凄くない。
レシピに書かれたとおり作れば良いだけだからだ。
教えられた部屋に行く途中、
銀髪の断末魔が聞こえた気がしないではないが、
聞こえなかったことにした。
「お待たせ。はい、マーモン」
「お、美味そうじゃん!」
「さて、始めましょうか」
部屋の隅でぴくぴく動いてる銀色の物体を踏みつけているボスは、
死ぬ気で見ざる能力発動だ。
「で、は何かできるのかしら?」
「出来て護身術とかじゃねえの?
王子、一般人じゃねえから判んねえけど」
「剣術使えないでどうすんだぁ?」
「銃くらいぶっぱなせんだろ」
「・・・・・・・・・」
レモネードを飲むのに忙しいマーモンを見て、
呆れたような顔をバカ2人に向けてるルッスーリアを見て、
ベルフェゴールを見た。
「ごめんね。少年」
「オレのことは王子って呼べよ」
「(そこの2人よりも)常識人だと思ったけど、勘違いだったわ」
「オレ王子だし?オレが常s」
がんっ べきっ どさっ。
「さ、、邪魔者は消えたわ。話して頂戴」
「ぐっじょぶ。ルッス姉さん」
むしろこれからルッスお姉様って呼ぼうか・・・。
「戦闘経験は全くないです」
「何か特技は?」
「ん〜ないです」
「・・・・・・・・困ったわね」
「ごめんなさい」
良いのよ。
そう言って頭を撫でてくれたルッス姉さんの手は温かかった。
「でも、あの頭のイカレタ自称神様に見初められるくらいだし、
何かあるんじゃなかしら?」
「というか、そもそもどうして一般人がここに居るんだい?」
「かくかくしかじかなのよ」
「むっ。なるほどね」
え?今の会話通じてたんですか?
「じゃあそうね、すきなことは?」
「お菓子作り、読書、ダンス、ピアノ。後運動ですかね」
「まあ、多趣味じゃない」
「それだけですから」
ふっと笑ったとかいう女の顔が、陰った気がした。
いれてくれたレモネードは美味しかったし、
クッキーもまあまあだったから。
だから・・・・?
使える気がした?
「色々やってきましたけど、やっただけです。
どれもこれも極めてませんから、出来るって言えるものないですよ。
英語と中国語も、話せるっちゃ話せます。
でも、その場凌ぎの話題くらいで、全然役には立ちませんし・・・」
「このクッキーは美味しかったけどね」
「っ!!マーモン!!!」
「はっはなしなよ!!!」
「、マーモンが窒息しそうよ」
「ぎゃぁぁぁぁ!!!ごめんなさいすいません!!
(お金払えないけど)許して下さい!!!」
そりゃもう、豪快に、ソファからスライディング土下座をかましました。