「モスカ、ちょっと其処の雑巾取って」
「かしょん」
「ありがと。箒たてかけといてね」
「うぃん」
「つか、どうやったらこんな汚くなるんだよ。くそめ」
いつも通り、はほのぼのモスカと会話中だ。
只今ヴァリアーの幹部は全員出払っている模様。
ちなみにその間、は全員の部屋の掃除をやるように脅され頼まれた。
こちらも大夫と世話になっているルッスーリアからの脅し頼み。
断れるはずがない。
本当に怖かった。
「これで終わりと。後はマーモンの所だけだね・・・・ふふっ////」
何を想像しているのかは、気にしない方が身のためだ。
モスカも500m程遠ざかった。
「ちょっと休憩しようか。油とお茶取ってくるから、リビングにいて」
「かしゅうう」
「手伝いは良いよ。1人で運べる」
「うぃん」
「はい。良い子」
モスカをリビングに向かわせて、雑巾と箒を持ったは、
既に通い慣れたキッチンへと足を向けた。
勿論、が夢小説に良くある最強ヒロインであったなら、
物音だとか、人の気配だとか、
なんとなくそうなりそうな展開とか、
分かったかもしれないが、いかんせん、
彼女は只、少しばかりお菓子作りが好きな、一般人であるからして、
『誰だ!!』
『なんだ小間使いかよ』
「ちょっと其処のいてくれる?これ置きたいんだけど」
『嗚呼、すまない』
「どうも」
一般人で・・・・。
「あれえ?オイル此処に置いた筈なんだけどな・・・」
『オイルなら上にあるやつか?』
『嗚呼、ほらよ』
「どうも。あ、ついでに紅茶のカップ取って貰えません?」
一般人で・・・・。
『これか?こっちか?』
『いや、こっちだろ』
「そっちそっち」
『嗚呼これか』
『高いな。ウェッジウッドだろ』
「良く判りましたね。こうゆうのどっから買ってくるんだか」
ではないことにする。今から。
一般人にイタリア語と日本語で会話するスキルはない。
はたっと訳の判らない空気に(やっと)気付いたのか、
明らかに堅気でない男達は、銃を構えた。
こいつらも相当莫迦だ。
『おい!!動くな!』
「あ、ケーキ持って行こう」
『聞け!!!!!』
ごりっと音がして、眉間に感じる冷たい感触。
いつだったか目の前でぶっ放されたそれに似ている、
男達の手に黒光りする物体。
「ちょっ・・・・」
『まあ良い。幹部が出払ってる今、情報を頂くには絶好の機会だ』
『吐いて貰うぜ?洗いざらいな』
「・・・・・・・・・・」
今までの流れからして、
日本語しか話せないのが分からないのだろうか。
この2人、かなり頭が可哀相らしい。
「(サングラス似合ってねえなあ・・・)」
『聞いてるのか!?さっさとボスの部屋へ連れて行け』
『本気で打つぜ?』
かちりとセーフティーバーをおろす音が響く。
これには流石のもぴくりと反応した。
嫌でも思い出す、あの時の硝煙の匂いと、耳をつんざくような・・・・。
「!3時!!」
『うおっ!!』
ざくっ。
ぐにゅり。
『くそっ!!』
「っあ・・・・・・」
運悪く、ケーキを切ろうと持っていた包丁が、
大声と扉の音に驚いてけつまづいた男の胸へと刺さりこむ。
出来すぎているのは百も承知だ。
もう1人は幹部が帰ってきたことに気付くと、窓から飛び出していった。
ぽたりぽたり。
包丁から滴る赤い血が、掌を撫でる。
キモチワルイ、人肉の感触が離れなくて、
離したいのには離れなくて・・・・。
「やるじゃん」
「むむっ。心臓一付だね。才能あるんじゃない?」
「ししっ流石だな!!」
「此処はシリアスになるところ。シリアスに」
「料理でもしたと思って忘れろお」
「そうする」
笑い飛ばしやがった王子にあっけらかんとなって、
結局いつの間にか、優雅に午後の紅茶を飲んでいた。
その後いつもどおりケーキを作ったせいか、
なんだか刺した感触と、ケーキのたねを混ぜる感触が混じって、
結局の所、曖昧になって終わってしまった。
ので、やっぱり悪いなと思い、男の人のお墓を作り、
毎日、花と紅茶で見舞っていたりする。
ウェッジウッドってすぐ分かったし、マニアかな?
(、モスカなんか連れてどうしたのさ)
(この前の一件以来離れてくれなくて)
(ふうん)
(何処でも一緒かよ!!笑え・・)
(ないわね)
(((エロじじいが)))
うちのモスカには、時々9代目が入ってます。