「もう無理・・・・」
「無理じゃねえ」
「無理」
「無理じゃねえって言ってんだろ」
「だってさっきから・・・」
「お前が緊張してるからだろうが」
「そんな事言われたって・・・」
「力抜けえ」
「どうやって?」
「だからなあ・・・」
「やらしいわね」
「むっつりかよ!!!」
「勝手なこと抜かすなあ!!」
「スクアーロとなんて死んでも御免」
「う゛ぉぉぉぉい!!」
ヴァリアーアジトの屋上で、ナイフ投げの訓練中だった2人。
例の事件があってから、護身術くらい、
やはり身に付けておいた方が良いだろうと、
言い渡された結果がコレだ。
銃を撃つには細すぎる腕。
体術を会得するには、大人になりすぎた身体。
天性的暗殺者気質でもなく。
細腕でも使えそうなナイフをということになったのだ。
「つか、ナイフなら王子が教えるのが道理じゃね?」
「あら、ベルったら嫉妬?」
「黙れオカマ」
「使い物にならなくするわよ?」
(((何処を!!??)))
「それより、元気ないじゃない?」
「(重大な問題をスルーした気がする)マーモンが仕事なんで・・・」
「ホント、マーモン好きだよな!」
「あの金の亡者の何処が良いんだあ?」
「ス・ベ・テvv・・・きもっ!!」
「自分で言わないの」
「でもマーモンもなかなかに懐いてると思うぜ!」
「餌付けられてるの間違いだろぉ」
「それ、マーモンに言ったら、一発であの世行きだな!ししっ」
ワイヤーにのせて、ベルがナイフを放つ。
やたらリアルな人型の的に、どすどすどすっっっと刺さったナイフは、
急所を逃すことなど無く、
その辺りに転がっているのナイフをあざ笑うかのように、
太陽に煌めいて鎮座していた。
「いいな・・・・」
「それでも的に当たるようになったじゃない。進歩よ」
「そうですか?だったらスクアーロの教え方が良いんですよ」
ぼんっと音を立てて赤くなったスクアーロを、
冷ややかな愛で見るヴァリアー幹部2人組。
「「やらしい」」
「だからどこがだぁぁぁぁ!!」
「もう、スクアーロったら、の事大好きなんだからvv」
「そんなことより、ルッス姉さん、今何時ですか?」
「今?昼の1時ね」
「昼寝してきます」
「行ってらっしゃい」
「スクアーロ行きますよ」
「う゛ぉ゛ぉ゛ぉぉい!?」
引きずられて行くスクアーロと、
やたら爽やかな笑みを浮かべて手を振るに、
こちらも手を振りかえして見送った後、
2人は顔を見合わせた。
「実は、最強だと思うんだけど?」
「そうね、実はね」
「カス鮫、引きずられてたぜ?」
「そうね、引きずられてたわ」
「わざとじゃね?」
「わざとかしらね」
・・・・・・・・・・。
「「マゾ(じゃん/ね)」」
天窓つきのの部屋は、丁度この時間、
お日様がベッドに柔らかく差し込んできて、
昼寝するには絶好の時間なのだ。
お腹もいっぱいであるし、適度に運動もした。
「で、何でオレがここにいるんだぁ?」
「そんなの私の抱き枕になるからに決まってます」
「いつ決まった!!??」
「ついさっき」
危機感ゼロ。
はあっと、ヴァリアーに入隊して、いったい何度目だか。
もう、数えれば数えるだけ溜息が出そうなのでやめておくが。
「何年甲斐もなく照れちゃったりなんかしてんですか?
きもいですよ?」
「・・・・・・・・」
疲れる。
応答を続ければ絶対に疲れる。
ザンザスとの攻防で培った判断能力は、伊達ではない。
「おやすみなさい」
「嗚呼」
結局の所、自分もあまり睡眠時間を取れてなかったとかで、
案外抱き心地が良いな。
なんて、変態くさいことを思いながら、直ぐに眠りについたのだ。
「・・・・・・」
昼寝時のの腕の中は、いつだって自分の定位置で、
いつだってとは、つい最近知り合った2人には語弊があるかもしれない。
けれども、今は其処におさまる銀髪に、
怒りを隠せないのも事実。
折角、仕事を早めに、
中途半端なまま切り上げて帰ってきたというのに。
くるんっと寝返りを打ち、こちらを向いたの瞳が、まどろむ。
「マーモン・・・お帰りなさい」
にへらと笑って手を伸ばしてきたから、
腰に回る銀髪の腕は気に入らねど、
その胸に、今日は特別こちらから、飛び込んでやった。
(なあ)
(言いたいことは分かってるわ。ベル)
((仲良し家族の昼寝姿じゃん/ね・・・・))