「おはよう」

「おはよう
ねぇ、この間の事、詳しく聞かせて欲しいんだけど?」

「話す気はないと言ったでしょう?」

「ボク等、友達?」

「そうかもしれないわね」




だから踏み込んでこないで。

ハリーがココまで執着するのは、

スネイプとの恋人疑惑が瞬く間に広がっていたからだ。



それが発覚したのは、

この間、ルーピンの代わりに、スネイプがDADAの授業をした時。

人狼についての講義を始めたスネイプをは始終睨み付けていて、

最後に出した課題のことについては、

怒りを抑えられなかったために、

終業前にスネイプの頬を叩いて出て行ったほど。



それが、どうにもこうにも飾り付けやら、

聴力やら視力やらを疑いたくなるような解釈がされて、

仲睦まじい筈の2人の姿や、スネイプの浮気、

それでも一途に想い続けるの怒りが爆発したという構図になって、

全校生徒の話題の的になっている。

彼等の妄想に乾杯したい。




「ところで大丈夫なの?スリザリン戦」

「そうか、は知らないんだっけ?」

「何を?」

「今日ボク等はハッフルパフと戦うんだ」

「なにか問題でも起きたの?」

「スリザリンのシーカーが階段から落ちて足を挫いたらしいよ」

「まぬけだわ」

「そのまま永眠してくれれば良かったのに」




顔を見合わせ、手の骨を折ったほうが後々都合がいいだの、

どうせなら完全犯罪をやってみようだの、

恐ろしい会話が飛び交っていたのは軽くスルーして、

勢いの増す雨の中、試合開始のホイッスルがなった。



例に違わずは競技場の外で、

雨を凌ぎながら、歓声に耳を傾ける。



このまま何もなければいいが・・・・・。

シリウスの監視に向かわせたが、

猛スピードでこちらに飛んでくるのが視界の端に入るのと、

黒犬の気配を見つけるのと同時に、凍えるような空気がフィールドを覆った。

に目を向けたその一瞬に、会場が上げた悲鳴。




「ハリー!!!」




杖を出して浮遊呪文をハリーにかけ、に目配せしたは、

フィールドを取り巻く黒い塊に杖を向けた。

2つの声が重なる。

これだけ距離が離れていても、

威力を保ったまま的中させられるのは素晴らしい。




「「エクスペクトパトローナム!!」」




周囲に立ち込める空気が引いたとき、

は競技場内にいて、ゆっくりと降りてきているハリーに駆け寄っていた。

が抱きとめ、地面に下ろす。




「どう?」

「気絶してるだけだな」

「医務室に運んでもよいかな?」

「ええ。勿論」

「助かったよ」

「御気になさらず」

「あの・・・・さ、悪い。箒まで気が・・・・」

「しょうがないわ。見張りありがと」




ダンブルドアが出した担架に乗せられて、ハリーが医務室に運ばれた後、

生徒の収集がなされ、は誰にも気づかれないよう、自室へ戻った。

ハリーの状態が良好らしいことは聞いている。




「ルーピンに本当のこと言えよ」

「証拠がない。あったらとっくに言ってるわ」

「嘘だな」

「どうしてそう思うの?」

「何年一緒にいると思ってんだ?」




普通の人よりも沢山、自分に結びつくことを持っているは、

自責の念に駆られることも、通常より多い。

それがたとえ、明らかに彼女の責任でなかったにしてもだ。

そして必ず、それを1人で解決しようとする。

全ての幕をひき、確固たる結果と理由が得られた後の報告のみ。




、今回は1人で抱え込める問題じゃねぇぞ」

「でも・・」

「でもはなし。証拠を早く探して、見つけて、真っ先にルーピンに言え」

「ダンブルドアじゃないのね」

「関わってる奴が奴だからな」

「・・・・・・・」

?」

「・・・・・判ったわ」




はそれから数日、至って普通に授業に出、

シリウスを弄んだりからかったり、証拠を捜したりしながら、

スキャバーズを監視するという毎日を過ごしていた。

ハリーから、ディメンターと出くわした時のことを、

何故自分だけああなるのかとか、そりゃもう怖いくらい真剣に問詰められたが、

絶対に口を割らず、ただルーピンに話してみろとだけを口にした。



そしてまた、ホグズミード行きの週末。




「で、今回もお預け?」

「行きたかったら1人でどうぞ?」

が行かないなら嫌だね」




1つ盛大なため息をついたが、

ふと廊下の向こう側に見つけた人影3つ。

燃えるような赤毛2つに囲まれて、近頃よく詰め寄ってきていた黒髪が1つ。




「何やってんだあんなトコで」

「フィルチ氏が見つけたら色々と・・・・え?」

「どうした?」

「あの紙切れ・・・・まさか」




手から手へと渡されるぺらぺらの、ぱっと見ただのごみであるそれは、

にとって、あまりにも馴染み深すぎるもの。




「没収されたんじゃなかったっけか?」

「フィルチ氏がご丁寧に仕舞い込んでくれてたんじゃないかしら?」

「それをあの双子が奪ったって?」

「やるわね。あの2人も」

「で、ルーピンに言いに行くんだろうな」

「行くわよ。ハリーからあれを奪えたら・・・・ね」

「ああ・・・・・」




何の説明もなしにくれと言おうものなら、色々なことを要求してきそうである。

今までの事から、もそうなりそうな事は重々承知していた。




「早くても、言いに行くのはリーマスの体調が良くなってからよ」

「体調ね。あいつがの世話を必要としなくなったらの間違いだろ?」