その次の日、何事もなかったかのように大広間に行けば、
ちょうどスネイプがクラッカーを引いたところで、
笑いを堪えているところとばっちり眼が合ってしまった。
「おくれてスミマセン」
「気にせんで。さあさ、お座りなさい」
「どうも」
魔法で出された椅子に腰掛ける。
「、クリスマスプレゼントありがとう」
「くれないと、夜ごと自分の名前を叫ぶ靴下を送るって言ったの貴方でしょう」
「そうだったかな?」
「すてきな性格ね」
まあ、つまりは脅されていたわけだが、
ハリーとしては純粋にプレゼント交換がしたかっただけで。
そして気付いたようだ。
自分の送った物ではない、右耳についた黒いピアス。
「ボクの送ったのじゃないね」
「とある人からのプレゼントよ」
ふと浮かんだ悪戯を即実行にうつすあたり、
にはやはり悪戯仕掛け人の気質が備わっていると言えよう。
「もしかして、新しい彼氏でも出来たの?」
「よりを戻したの」
「「「え??」」」
「これ、セブルスからのプレゼントよ」
少し顔を赤らめて言えば、生徒殆どの視線が、
今しがたとったキッシュの皿を、がしゃんと落としたスネイプに向く。
それは殺気混じりだったり、天然記念物を見たみたいだったり。
隣にいたは、我関せずと、フライドチキンに手を伸ばしていた。
「、ボクというものがありながら」
「ハリー?いつから私が貴方のものになったのかお伺いしたいわね」
「じゃあ、あの日2人で・・・・やっぱり!?」
「嫌いな私に興味でもおあり?」
「それとこれとは話しが別だよ!!」
誰でも大好き恋愛話。
身を乗り出したロンに溜息をついて、
ふっと笑った(爆笑をこらえた)は、
ロンを見つめて、言い放った。
「キスして、愛してるって言ってくれたのよ」
先ほどの台詞は空耳だと決め込んで、
ゴブレットの水を飲んだ所だったらしいスネイプは・・・・・むせた。
吐き出さずに良く頑張ったと誉めてやりたい。
「ミス・。冗談は我輩のいないところでしたまえ」
「昨日の夜も、談話室から出れない私を呼びだして無理やり部屋に連れ込んだくせに」
「なっ!!!」
「そこで何があったの!?」
「ロンは黙って!それ犯罪だよ!!」
「いいのよハリー。私・・・嬉しかったもの」
「!!」
そこかしこでざわめき始めた数少ない生徒。
スネイプの様子を見ながら朗らかに微笑み続けるダンブルドアは、
寛大を通り越してすでに菩薩の域だ。
まあ、その騒ぎも、が嘘だと言えば一段落し、
ピアスは両親からの贈り物なのだと、事の発端になった質問に答える。
大広間を出る前に、
「昨日、私とリーマスを疑った仕返しよ」
と耳打ちするのを忘れずに。
「素敵な性格になったな」
「何のことかしら?」
「別に」
シリウスの所へ向かいながら、ふと言葉を漏らした。
先ほどのことを言っていると分かっているのだが、
は分からない振りを決め込んでいる。
「いつまでも続くって、変な勘違いをしていたの」
「生が?」
「そう。だから、嫌だった。長く長く生きてる中で、少しでも多く傷つくのが」
「今はどうなんだよ」
「たった一度きりの人生、色んな事を体験しなきゃ損でしょう?」
「だな」
色んな意味で、リドルに会えて、
あの3人と接近して、良かったんだとは思う。
向こうから、尻尾を振りながら猛突進してくる黒犬を見つけた時点で、
会話を中断せざるを得なくなったが。
「!!飯か!!!」
「私よりご飯のほうが大事みたいな言い方ね」
「帰るか」
「わぁ〜〜〜〜!!待て!すまん!!!」
「分かればいいのよ」
クリスマスだからと、彩り良くしてみたバスケットも、
シリウスにはあまり意味をなさなかったようで。
とりあえず元気でいてくれたから良いか。
などという、子持ちの母親的な感情を抱いていたであった。
「リーマスは?」
「大丈夫よ。私が行くから」
「頼む」
「頼まれるけど。、ひとつだけ良いかしら?」
「なんだ」
「気をつけてって言ったの覚えてるわよね?」
ぴくりと反応したシリウスは、一目を見た瞬間、
180度首を回転させる勢いで、ぐりんっと顔を背けた。
「クディッチ競技場で貴方を見た気がしたんだけど」
「かっ勘違いだろ」
「そう。じゃあきっと、気をとられちゃったのね」
「あれだけディメンターがいたんだ。誰だって・・」
「私、競技場に来たのがディメンターだなんて一言も言ってないけれど?」
さあっとシリウスに影が差す。
の笑顔は崩れない。
そこからシリウスが拝み倒すように土下座したのは、賢明な判断だといえよう。
「今度勝手なことしたら、ディメンターに突き出して・・」
「あいつを殺してからなら死んだっていい」
「シリウス・・・・」
「でも、この前のは確実にハリー見たさだろ」
「そうなんだよ!!ジェームズの息子が・・」
「へぇ―――――――?」
「ばぁか」
「こっこれからはあいつの為だけに動くから!!」
「はいはい。、逃げ道作るくらいはしてあげていいわ」
「いいのか?」
「昔のよしみだからね。死なない程度に」
「おう」