が色んなところに気を使っている中、
ついに対レインブクロー戦の日がやってきた。
クルックシャンクスがスキャバーズを食べた疑惑の日から、
そいつの行方を追っていえるものの未だ尻尾すら掴めず、
との機嫌が相当落ち込んだ状況での今日。
「・・・・大丈夫?」
「何の事かしら。むしろ試合を控えてる貴方こそ大丈夫なの?」
「何だかピリピリしてるし、顔が・・・その・・・やつれちゃってる」
「え・・・・?」
「は何も話してくれないから・・・これでも心配してるんだよ?」
「・・・・・・・・」
心配してくれる誰かなんて、彼らぶりで。
その居場所を自分で壊してしまってからこっち、
こんな言葉をかけてくれる人は・・・・いるにはいたかもしれない。
けれどそれは、壊れた居場所の人達だからと。
「ところで、シリウス・ブラックを捜して夜毎歩いているというのは本当?」
「夜毎じゃないよ。時々」
「出歩いている事には変わりないのね?」
「・・・・・・・・うん」
「何のために」
「はああ言ったけど、僕は・・・・」
だんだんこの子が(嫌に)ジェームズに似てきたことを再確認した。
純粋にただ、自分を信じる。
試合のホイッスルがなった後、
リー・ジョーダンの解説っぽいものを聞き流しながら、
無意識のうちにピアスに触れていた。
少しずつ、確実に近づいてくる影。
「エクスペクトパトローナム!!」
「え?何?」
アイツ等が来ればすぐに分かるにとって、
ハリーの叫んだ今の呪文は疑問でしかなく、
皆が、スニッチを取ったのであろうハリーへ走っていく中、
その波に逆らって、光の向かったほうへと足を向けた。
「・・・・・・・愚か者」
「・・・・気付いてたのかい」
「当たり前でしょう?」
「そうだね・・・・あ」
「ハリー」
「・・・・・マルフォイ?」
「程ほどにしときなさいよ」
マルフォイを足蹴にしているハリーに微笑みかけて、
校舎から出てきたダンブルドアに会釈する。
その後の談話室での騒ぎをバックミュージックに、
は、見知ったシルエットが禁じられた森から出てくるのを見た。
「・・・・・あの鼠が行方不明なの言ってなかったかしら」
「?」
「お帰り。ハリー」
「ただいま。ずっと其処にいたんだけどね?」
「そう。で、何が聞きたいの?」
「えっと・・・あっ・・」
「聞きたい事があるならいってくれる?」
「ここだと・・・ちょっと・・」
「それじゃあ明日の夜、私の部屋に来なさい」
「合言葉は?」
「変わっていないわ」
そろそろお開きににしなければ、マクゴナガルの怒鳴り声が聞こえてきそうである。
また明日と言い合って、お互いの部屋へと赴いた。
その夜、ロンの叫びとともに、
また顔を合わせて苦笑することになったのだが・・・・。
そして次の日の夜。
忍びの地図を預かることが出来たというリーマスの報告が終わってすぐ、
螺旋階段を上ってくる足音が聞こえた。
「いらっしゃい」
「・・・・・・うん」
一度来たことはあるものの、やはり緊張するらしく、
ソファに促すと、安堵の溜息を漏らし、ゆっくりと腰をかけた。
には、鼠の行方を追ってもらっている。
「さて、先ずは忘れ物」
「これ!ボクの透明マント!!でも・・・・どうして・・・・?」
「私は悪戯仕掛け人と仲が良かったのよ」
仲が良かった。
友達。
「悪戯仕掛け人って?」
「ジェームズ・ポッターを筆頭に、リーマス、シリウス、ピーターの4人組のことね」
「誰・・・」
「リーマス・J・ルーピン、シリウス・ブラック、ピーター・ペディグリュー」
しんっと静まった室内。
カップを置く音がやけに響く。
ボーっとしていたハリーを、
溜息をついてみたは、早速口火を切った。
「誰について聞きたいの?」
「あ・・・えと・・・」
「シリウス・ブラック・・・かしら?」
「父さんと母さんを裏切ったって」
「先生達や大人が言っている事ね」
「・・・・・・・うん」
「貴方はどう思うの?」
「どうって言っても・・・・」
「写真は持っているんでしょう?」
とても、とても幸せそうに笑っていた。
一番気があっていたのだろうと、想像がつくくらい。
みんな幸せそうだったというのも同じで。
くせっ毛で若い父さんも、女の子に困らなかったのだろう青年も、
気の弱そうな小太りの男も、華奢な鳶色の髪の人も。
黒髪で、毛先にパーマが掛かった、夜色の瞳を持つ少女も。
「小指が・・・あったって」
「貴方小指が転がっていて、その小指の持ち主がわかるの?凄いわね」
「大きな爆発を起こして・・・・」
「見た訳じゃないんでしょう」
「答えを教えてはくれないの?」
「嘘を吐いてるかもしれないのに?」
「そんなっ!!」
事あるわけない。と続くはずだった言葉は、
窓の外に張り付いてきた数人のディメンターによって遮られた。
どんどん低くなってゆく室内の温度。
「・・・・・・・」
守護霊が現れた時の銀色が、窓を包む。
黒はどこかへ飛んでいった。
それと違う黒が、数分と立たず部屋へと舞い込んだのだが。
「おかえり」
「ホー」
「・・・どうして嘘なんて」
「私が嘘を吐いているか、大人が嘘を吐いているか」
「は、シリウス・ブラックが犯人じゃないって思ってるの?」
どちらとも取れる微笑。
まるで早く休めというように梟が鳴いて、
の指を甘噛みし続けている。
これで話は終わりだというように、は立ち上がった。
「1つだけ答えて」
「なに?」
「どうしてこの頃疲れてたの?」
「・・・・真犯人がなかなか見つからないからよ」