グリフィンドールのクィディッチ優勝が決まり、
喜びに包まれた中での試験最終日。
バックビークの処刑が決まったという手紙を持った3人は、
少し離れた場所に座っているとのところまで来ていた。
「?あの、少し聞いて欲しい事があるの」
「珍しいわね。ハーマイオニー・グレンジャー。まあ、聞くだけならいいわよ」
「良い方に転べば言わなくてもいいかなって」
「なんのことだよ」
「の所為じゃないのよ!!」
「意味がわからないわ。論点をすばやく述べてもらえる?」
「バックビークが処刑されちゃうことに・・」
必死に涙を堪える栗毛を見て、まったく意味が分からなかった。
あの気高い生き物が何をしたというのだろう。
自分を傷つけはしたが、マダムポンフリーが跡形もなく消してくれた筈だ。
「どういうこと?」
「マルフォイが、傷つけられたと訴えたの」
「なんですって?」
「マルフォイの奴だよ!!」
「自分で転んで怪我したくせに、それをバックビークの所為にしたんだ!!」
「ずっと図書館に行ってたのはそれか?」
「・・・君、知ってたの?」
「まあな」
に言われてお前を見張ってたんだよ。
なんて、言えない。
「森番の小屋へ行くんでしょう?」
「えっええ」
「一緒に行くわ。あの崇高の生き物をむざむざ殺させるのは気が引けるから」
「ありがと、」
一度自室に戻ったは、透明マントを引っつかみ、
物凄い怒りを心の中に押し殺したまま、大広間に戻ってきた。
ピーターの名前をハグリッドの小屋で見たという、
リーマスの報告を聞いた後で。
気づいてない訳じゃない筈。
きっと何か事を起こす。
「あれ?えっと・・・・人のほうのは?」
「後から来るわ。先に行きましょう」
「え?あ。うん」
2人ずつ強制的に透明マントに包まらせて、ハグリッドの小屋へと向かう。
上空を、真っ黒なフクロウが飛んでいた。
「・・・君も透明マント、持ってたんだね」
「便利でしょう?1枚あると」
そんな簡単に手に入るものでもないと思うのだが・・・・。
隣にいるハーマイオニーは、
の空気の変化に気づいている。
言い方に、ロンは気に食わなかったみたいだけれど。
「ハグリッド、僕たちだ」
通された部屋で、震えながら紅茶を入れるハグリッド。
もう、全て手を尽くしたという風だ。
「ルシウス・マルフォイが手を回しているの?」
「そうだと思うが・・・」
「だとしたら私達に出来る事はないでしょうね」
「そっか・・・・」
「そうだ!忘れとった!もうすぐダンブルドア先生が来なさる!!」
「見つかるとまずいわね」
「裏口から出ろ」
椅子から立ち上がり、3人を促そうとした瞬間だった。
「スキャバーズ!!どうしてこんな所に!」
「!何するの!!」
「ホー」
「外にいなさいって言った・・」
「ホーッホーッ!!」
窓から突進してきて、今にもネズミに襲い掛かりそうになっている梟。
外から聞こえるの声。
幸い3人は、別の梟が鳴いたと思ったらしい。
珍しいことでもなんでもないのだが・・・・。
肩に乗ったほうのを思いっきり睨んで、外に放した。
「早く!」
「行きましょ。私達がいたら、余計に先生の立場が悪くなるわ」
ロンがスキャバーズを掴んでいることを確認してから、
ハーマイオニーに透明マントをかぶせた。
外はもうほとんど真っ暗で、月は雲に隠れていて見えない。
「スキャバーズ!おい!!何すんだよ!」
「煩いわよ。ロナルド・ウィーズリー」
「こいつ、言うこと聞かない!あいたっ!!」
「ロン!!!」
お互いの姿が見えない状態から一転。
マントの下から這い出て来た小さな影と、それをかなぐり捨てた赤。
「追いなさい!!」
「ダメだ!暴れ柳が!!」
「キャー――――!!!」
「グレンジャー!」
「危ない!!」
ハリーに引っ張られて倒れこめば、
今しがた自分がいた所に、柳が太い枝をたたきつけていた。
助けてという声で振り向けば、黒い犬が、ロンとネズミを引き摺って、
暴れ柳のうろに入り込もうとしている。
「ダメよ!!貴方1人で何ができるって言うの!!」
のそんな叫びにも耳を貸そうとはせず、
犬と1人と1匹は、木のうろに隠れて見えなくなってしまった。
その後を、柳の攻撃をかいくぐったが追う。
襲い来る枝をよけている人を尻目に、悠々と柳に近づくクルックシャンクス。
こぶを押せば大人しくなる事を、彼も知っているのだろう。
「、ねぇどうなってるのよ!!」
「ウィーズリーは無事だから、心配しないでいいわ」
「どうしてそんな事言えるのさ!!」
「あの莫迦犬を良く知っているからね」
こんな時になっても答えを教えてくれないのか。
苛立ちを覚えながらも、の後に続く。
着いたのは叫びの屋敷で、
古びた階段を、まるで先を知っているかのようにスタスタと進む。
1つの扉をくぐれば、恐怖に打ちのめされたようなロンと、
スイキャバーズを捕らえたが眼に入った。
「ロン!大丈夫!?」
「罠だ・・・あいつが、あいつがアニメーガスだったんだ!!」
「え?」
「、そのまま抑えて置いて」
「ホー」
「シリウスはどこ?」
「・・・・ここだ」
扉の影から現れた殺人犯は、なんだかやつれていて、
威厳というものがまるでない。
を前にしているからなのかもしれないが・・・・。
3人は驚きや不安に飲み込まれたように動けなかった。
「死なない程度にって意味わかってる?」
「死んでない」
「丸腰の貴方がホグワーツの生徒を囲むなんて、どうかしてるわ」
「すまん」
「許すのはあれが最後だって言わなかったかしら?」
「・・・・・・・悪い」
「これ以上、人が死ぬのを見させないで」
「・・」
ただ、2人の世界がどうのとか、
そういうことを考えてたわけではないけれど、
裏切られた気持ちがあって、
気づけば杖を向けて叫んでいた。
「エクスペリアームス!!」
「シリウス!!!」