「奴を抑えろ!!」
「どうしたの?セブルス。そんなに慌てて」
「薬を服用していない!!」
「なっ!!」
戒めの明かりが彼を照らす。
震える。変形する。
「セブルス!彼らを連れて城に戻って!」
「お前も来るんだ!」
「!!」
「あいよ」
「貴様!!」
魔法で縛り上げ、少し強行ではあるが、
城の方へと引きずっていく。
自分達が、止めなければ。
この、友達を。
「!!!ぺディグリューが!!」
「っ!!」
気づいた時にはもう遅い。
ちょこまかと走り去っていく影は、すぐに闇と同化してしまった。
それ以前に解決すべきことがあるのだ。
「シリウス!!」
キャウンキャウンという鳴き声のした方にかけていく。
ただ、狼の身体を見て、
急ブレーキをかけなければならなかったが・・・・。
「リーマス・・・・」
自我失った自分を、傷つけてきた過去。
見失わないで。
どうか。
貴方は、寂しがりやで、
自分を押さえ込む事が上手い、ちょっと腹黒な魔法使いだから。
武装解除の呪文がリーマスの身体に直撃する。
吹っ飛んだルーピンは、そのままぴくりとも動かない。
その身体に駆け寄って、
もしもの時のためにスネイプの研究室からくすねていた脱狼薬を、
ゆっくりゆっくり口の中へと含ませていった。
まだ満月は煌々と輝いたままだ。
彼らはどうなっただろうか。
ちゃんと校内に帰ったのか。
帰せていなかったら最大級のお仕置きだ。
「!!」
「どうしたの?」
「あの・・・な」
「なに」
「2人、逃がしちまった」
「・・・・・・・・覚悟しなさいよ」
飛んできて、人型に戻ったを睨む。
今しがた考えていた最大級のお仕置きにいったん終止符を打って。
「リーマスをお願い。ダンブルドアのところに連れて行くのよ」
「判った」
「本当に?」
「判った!ちゃんと最後までやる!!」
「で、セブの記憶を・・」
「消しといたよ」
「ありがとう」
知らない方がいい真実だってあるから。
もう一度ダンブルドアのところへ届ける事に念を押して、
寒気のするほうへとダッシュした。
悲鳴を上げて転げて行った莫迦犬に、
吸魂鬼がキスを施していない事を祈りながら。
そして、黒い梟が今、何をしているかを、
彼女は思い出して、最大級どころでは足りなかったな。
と、余裕の出来た頭で考えていた。
暗い森を走る走る。
造られた木、草、花。
もう、其々が独り立ちして、
綺麗な自分を魅せようと競い合いながら生きている。
どんどんと増していく寒さに囚われないように。
の中にも巣喰う闇の過去。
目の前に見えてきたのは、
吸魂鬼に襲われている莫迦犬、眼鏡、栗毛。
飛び出す銀色。
倒れこむ今の人達。
そして、それを見ている莫迦3人。
「背後にもう少し気をつけたほうがいいんじゃない?」
「「「っ!!!」」」
「いいわよ。知っているから。逆転時計でしょう?」
「どうして・・・」
「あんな莫迦犬でも、私の友人だからね」
そう言って笑うは、とても満足そうで。
無力だと自分を罵った彼女ではなくて。
何にも包まない愛情が、垂れ流し状態の。
少し、自分の名付け親に嫉妬したのは内緒だ。
「そうだ!スネイプの記憶が・・・」
「私が消したのよ」
「どうして!!」
「そのほうが、いいと思ったから」
信頼していないのは自分か・・・・。
「でも、助けられたんでしょう?」
「うん」
「だったらいいじゃない」
「そうかな」
「そうだと思うわ」
自由であり不自由なものと比べれば。
「それじゃあ、私は先に行くわね」
「また後で」
「また後で」
「そうそう」
「・・・なん・・・だ?」
「死ぬ覚悟をする時間を与えてあげるからね?」
向けられたのは、同情のまなざし。