煌々と照りつける満月が、を不安にさせる。

孤独だろう。

塔の中の記憶は、昔のヌクモリを思い出させて。




「シリウス・ブラック・・・・だっけ?」

「脱獄犯の名前ね」

「ボクを狙っているって」

「何故?」

「ヴォルデモートを復活させるため?」

「ここで問題が1つあるわ」

「ヴォルデモートを瀕死状態に持ち込んだのは僕じゃない・・・」

「そうね。だったら何を危惧する必要があるの?」




けれど・・・・・




「脱獄犯に脅えながらこれからの学校生活を送るのも、
そんな事は考えず、ただ楽しむのも、貴方しだいよ。判るわね?」

「うん」

「貴方が覚えておかなければならないのは、
貴方にはまだ、ヴォルデモートに抗えるだけの力がないことだけよ」

「そう・・・だね」




だってね、彼はあんなにも貴方を愛しているもの。

かといって答えを与える気などさらさらない。

一番許しがたいのは、指の一本なくなった鼠。

捜さなければ。

彼がホグワーツにいると言ったなら、それは事実だろうから。













「行ってらっしゃい!」

「ハリー!約束してくれ、どんな事があっても・・」




ウィーズリー氏の言葉を遮って、ホグワーツ特急は発車。

扉の閉まる音と共に、勢い良く、蒸気の噴出す音がする。

ハリー達5人は、空いたコーパートメントを探して歩いていた。




「さっき何を言われたの?」

「絶対にブラックを探したりするなって」

「あいつらしいな」

「気にしてる?」

「ん〜あんまり」

「素晴らしいわ」




とうとう最後尾まできて、やっと空いた所を見つけた。

窓際には、不審な人物。

は勿論知っていたのだが。




「この人、誰だと思う?」

「ルーピン先生」

「どうして知ってるんだ?」

「鞄に書いてるわ」




とりあえず、窓から一番離れた席についた3人。

それに反して、ローブを頭からすっぽり被ったそいつの隣に腰掛ける2人。

どうやら、ココまで一緒になったのも、ただの偶然らしい。

楽しそうな・・・・筈の会話が聞こえてくる。




「ところで、ホグズミート行こうな」

「そうね。マグルなしの村だし」

「とっておきの菓子屋に連れてってやるよ!兄貴達に聞いたんだ」

「見てきたら、僕に教えてくれなきゃ」

「どういう事?」

「ボク行けないんだ。許可証にサインしてくれなかったから」




一瞬にして、コーパートメントの空気が沈んむ。

ハリーだって、本当は行きたいが、どうすることも出来ないのだから。

そんな時だった、扉が開いて、オールバックが姿を見せたのは。




「うげっ」

?」

「スイマセン」

「おやおや、誰かと思えば最悪なメンツでお揃いだね」

「通路を1人ずつしか歩けない従者をお連れだと、
さぞかし最後尾まで来るのに時間が掛かった事でしょうね?」

「なんだと!!」

「餓鬼みたいにキンキン叫ぶなよ。うっせえな」

「先生が起きてしまわれるわ」




にっこりと笑ってマルフォイの対処をする

ロンは、何故か身近に同じようなキャラを感じて、

大分と震えていたようだが・・・・・。

マルフォイは、舌打ちをしてコーパートメントから去っていった。




「張り合いがなさ過ぎるわ」

「あのな、休暇中アイツを相手にしてたんだから当たり前だろ」

「そうかもしれないわね」



「ねえ、の性格ってああなの?」

「素敵だと思わない?」

「思わないよ!!」

「なんだか・・・・変わったわ」

「そうかな?」

「そうよ」




小声で話す筒抜け会話。

相変わらずの態度や、フルネームで隔てた壁は以前と同じなのだけれど、

なんとなく、そう、今を、楽しんでいるようなそんな気がする。

そんな3人の会話を聞きながら窓の外を見ていたの顔つきが、

だんだんと怪訝になっていった。

勿論は、それを見逃さない。




「どうした?」

「まだ時間じゃないのに、速度が落ちてるわ」

「予感的中か」

「そうでないことを祈りたいけど、どうも無理みたいね」




が喋っている間に、汽車は完全に停止してしまった。

明かりが急に消えた事に対する叫び声と、

荷物の落ちる音が響く中で、だけは、冷静に呪文を唱えていた。




「「ルーモス。光よ」」

「大丈夫?御3人さん・・・・・増えてるわ」

「増えてるのはどうでもいいが、大丈夫じゃなさそうだぜ」




近付いてくる雰囲気は、明らかにアイツラのもの。

来なければいいと思っていた。

だが、心のどこかでは、来る事を否定しきれていなかった。

一段と険しい顔になったは、クルリと窓際を向いた。




、リーマスを起こしてくれる?」

「了解。お前らあんまり動くなよ」

「うっうん」

「おい、起きろ」

「ん・・・・ああ。来てしまったのかい?」

「そう。いつから起きてたか知らないけど、手助けくらいはしてくれるんでしょ?」

「う〜ん。には叶わないなぁ」

「一度でも、私に勝てた事があったかしら?」




その言葉と同時くらいに、コーパートメントの気温が一気に下がった。

ドアの向こうに見える怪しい影。

ゆらりという擬音が一番正しいであろう。

ゆっくりとドアが開いた瞬間、の杖から、銀色のものが飛び出した。