マクゴナガルに事情(嘘)を説明した後、
昼食を自分の部屋でとり、外に赴いた。
次はハグリットの授業だ。
大人しく自分の手の中に納まっている怪物の本を見やり、溜息をついた。
「不安そうだな」
「とてもね」
「なるようにしかなんねぇだろうけど」
「〜〜!」
後ろからの呼び声に振り向いて溜息。
どこに行ってたのとか、体調が悪いんじゃとか、
とてもとても気にかけてくれる。
うっとうしいと思えるほどに。
ハグリットの小屋について、改めて思った。
怪物的怪物の本は、かなりいい事が書かれてある。
生物学に関しては一流の本といっても過言ではないかもしれないが、
ここではあまり適さなかったのだろう。
折角の本たちがグルグルまきにされているのを見て、
は再度、盛大な溜息をついた。
「まずは、教科書を開いてだな・・・」
「どうやって?」
「なに?」
ぐるりとハグリットが見渡せば、
各々のやり方でなんとか本が暴れないようにしている。
がっくりと目に見えて肩を落としたハグリットは、ぴたりとの前で目を止めた。
「おお!!は判っとる!!」
「ええ。そうね」
「背をなぜりゃあ良かったんだ」
「凄いね」
「他の魔法生物学の本を読んでいれば判るわ」
もちろん其れは本当だが、この本をなだめたのはルーピンだ。
ルーピン曰く、ぎたぎたのめっちょんめっちょんにして、
とある怪物の餌になるか、教科書として従うか、
どちらかを選ばせる必要があるそうな。
とりあえず本を置いて、新しく作ったのであろう柵の方へと赴いた。
神々しいまでに歩んでは草を食んでいる生き物。
「ヒッポグリフ・・・・」
は特別なアニメーガスだ。
3度目の時では普通の鳥になるだけだった。
だが、今世は違う。
いや、今世も違う。
ホグワーツの森を造った時もそうだった。
人間でいる時でも動物と会話が出来る。
ただそれは、尊敬などではなくて、恐れ。
特に彼女が、向こうにとってもこちらにとっても大きなものである事を知っている、
もしくは理解できる動物たちならなお更の事。
ハリーが柵に入っていくのを見ながら、
どうか彼等が自分に気付かないでいてくれること願った。
「・・」
「判ってるわ」
ハリーが乗るのに成功し、拍手喝采を浴びている中、少しづつ檻から遠のく。
決して自分から頭を下げることのない生き物が、
自分に頭を下げでもしたら、それこそ大事だ。
そんな時だった、
ふっと横目に見えた最悪の光景。
何も考えるヒマなどなく、身体が動いていたのだ。
の静止も聞こえない。
マルフォイに向かって振り下ろされる嘴とそれの間に・・・・。
「!!!」
肩の痛みに顔をしかめながら、
青い顔をしている莫迦を睨む。
ヒッポグリフも、誰を傷つけてしまったのか判ったのだろうが、
の睨みはそちらにも向いていた。
頼むから、下手なことはしないように。
「あなたやっぱり相当の馬鹿ね」
「こっこの化け物の所為だ!!」
「化け物?侮辱された事のわかる、
少なくとも貴方よりは利巧で尊敬すべき生き物だわ」
「、大丈夫か?」
「平気。すみません先生?医務室に行っても?」
「ああ・・・・・・始めはもっと、小さいのからやるべきだったな」
「いいえ。人の思いを汲み取ることのできる生き物は、
魔法生物飼育学において、何よりも先に知っておいた方がいいと私は思いますよ」
思いを汲み取れるという事は、
自分達の敵になりうるかもしれないから。
マルフォイをもう一睨みした後、
に付き添われて医務室に向かうに、
ヒッポグリフ達が頭を下げていたことを知るのは、誰一人としていなかった。
今日ほど魔法薬学の授業が静かだったことはないだろう。
あの件以来、マルフォイは一言も口にしない。
遅れているを気にしているのか、ちらちらと扉の方を向いている。
包丁の下では、微塵切りにする材料が千切りのままだ。
アレから何もなかっただが、今日になって肩が痛み出したらしい。
医務室に行ってから来ると言付けを受けたハリーは、
嫌々ながらスネイプにそれを伝え、自分の実験を始めていた。
は、しかめっ面をしていかにも機嫌が悪いですと言いたげだ。
「何かあったのかしら?」
「何かはあっただろうケド、僕らは知らないよ」
「大丈夫かな?」
「珍しいね。ロンがの心配するなんて」
「っ!!」
「もうそろそろ意地張るの止めたら?」
「意地じゃない!!」
「はいはい」
「あの時の怪我は治っている筈だから・・・・」
スネイプの目がきらりと光ったのを見て、自分の作業に戻った3人。
結局が現れたのは、次の闇の魔術に対する防衛術の時間。
始業のベル、ギリギリで滑り込んできたに、リーマスはにっこりと笑いかけた。
「さて、この箱の中に今日の課題が入っているわけだが」
がたがたと煩い音を立てている箱を示してリーマスが言う。
皆、興味津々といった感じで見入っていた。
前とは大違いだななどと考えても見る。
どんどんとなされていく説明と、実演。
最初のスネイプのはしっかりとカメラにおさめておいた。
後でスネイプに見せるためだ。
オレが心配なのは。
アイツにとって一番怖いものは多分・・・・・。
出来れば回して欲しくなかった。
「それじゃあ、次ぎは」
「はい」
しっかりした足取りでボガードの前へと進む。
ボガードがのほうを見た瞬間、
ぶあっと音が立ちそうな勢いで木の長机なったそいつ。
「え?」
全員の目は点だ。
そりゃあそうだろう。
あの、・が怖いものなんだから、
もっとバーんっとしたものとか想像してたに違いないから。
ただ、つむがれる記憶は、
本当は怖くて、泣き出してしまいそうな。
けれど彼等のシアワセの為だと言い聞かせて。
ヤメテ。
ホントウハシニタクナイノ。
この時に呪文を唱えておけばよかった。
オレがそれをしなかったのは、
吹っ切れているのではないかと言う淡い希望がどこかにあったから。
「・・・・・・やっ・・・・イヤ!」
か細い声に目を見開いたオレは、すぐさまリディクラスを唱え、
ぐらりと倒れてきたの身体を支えた。
今も頭の中に響いているのであろう望みを、
俺が予想できていれば・・・・。
「悪い」
「ありがとう」
「大丈夫・・・かい?」
「ええ。ごめんなさい」
絶対大丈夫なんかじゃないのに、
笑って見せる主を、俺はどうしたら守れるのだろう・・・・・。