あれから、叫ぶ2人を宥めて、
隊室へ行き、ミーティングを終え、報告書をまとめて、
なんて色々していれば、帰路に着いたのは8時を回っていた。
ただ、今日は、自分の帰りを彼女が待っている事が分かっているから。
「おかえり。春秋」
「ただいま。」
家の扉を開けば、日中とは打って変わって、
優しい微笑みを自分に向ける、恋人が、そこにいた。
「ご飯あっためるから、先にシャワーあびてくる?」
「そうだな」
美味しそうなダシの匂いがする。
自分よりも2つ年上の彼女は、ボーダーの魔女なんて呼ばれているその人で。
自分の大切な恋人だ。
長い期間かけて口説き落とした話は、またの機会にとっておこう。
「お疲れ様」
「美味そうだ」
「春だしね、菜の花のおひたし。そろそろいかなごも並び始めてるから」
「いただきます」
「どうぞ」
用意されている夕飯に手を合わせて、
そういえば、と切り出す。
「今日、どうだった?」
「スポンサーの事?なかなか頑固なおじさまだけど、
とりあえず食事会まで持って行けたから、次まで持ち越しかな」
「流石、ボーダーの魔女だな」
「その呼び方止めてくれる?
今日も、中学生の子たちにおばさんなんて言われるし、聞こえてるわよ!って!」
失礼しちゃうわ。
と鰆の身を必要以上に細切れにしながらが声を荒げた。
仕事は仕事。
オフはオフ。
仕事に生きたい訳じゃない。
やりたい事も沢山ある。
だが、お金を頂いて、雇ってもらってるわけだから、その時間へらへらするのは間違ってる。
それが彼女の大前提だ。
だからこそ、特に若い世代が多い戦闘員には、
勘違いされる事があるのだが・・・。
「の良さは俺だけ分かっていれば良い」
「すごい口説き文句」
「まんざらでもないだろ?」
「自分で言わない」
「本音は?」
「幸せ」
彼女の笑顔が好きだ。
食事を終え、食器を片づけた後、彼女がシャワーを浴び終わるのを待って、
2人でソファに腰掛け、話をする。
それが、時間が合った時の過ごし方だ。
「・・・・・・・・春秋」
「ほら」
名前だけ呼ばれて上を向けば、両手をつきだした彼女がいるから、
笑って、抱っこして、後ろからきゅっと抱きしめる。
2人でいる時は、あまえたで。
自分にも他人にも厳しいけれど、最近やっと、弱音を吐いてくれるようになった。
長かったと思う。
「落ち着く」
「俺もだよ」
お互いのぬくもりを感じられる時間。