「それじゃ、行って来るね」
「忘れ物ない?」
「うん」
「なら楽に取れるよ」
「ありがとシャル」
団員達が総出で見送る中、
あの可愛らしいのかグロテスクなのか判らないヌイグルミ兼リュックを背負い、
はくるりと踵を返した。
クロロの突拍子もない一言で、止まらざるを得なくなるのだけれど。
「何処に行くんだ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
「やっぱり聞いてなかったんだな」
「耳が塞がってたのよ」
「重症だね」
「ハンター試験受けてくるって、昨日言った」
「なんだと!!ダメだ!!」
「それ、昨日、皆にも言われたけど、もう行くって決めたから行く」
「携帯も持ってないのにどうやって連絡する!?」
「連絡って要るの?」
「1日5回は要る!!」
「面倒臭い。あたし、返事の催促嫌いだし」
「力も不十分・・」
かぱっ。
ごくんっ。
もぐもぐもぐ。
「団長!!!!???」
「!?あんた何してんの!!」
「え?ダメだった?」
『ダメに決まってるでしょ(だろ)!!』
のせなに背負われていたヌイグルミ。
クロノス。
は、もっちゃもっちゃと我等が団長を食し、
たった今飲み込んだところだ。
まあ、少しばかり後方で、
何が起こったのかわからずきょろきょろしている団長を見つけ、
と交互に見やる事になるのだけれど。
「機械仕掛けの神様。あたしの能力。詳細は内緒。行って来ます!」
団員達は、それから何も言わず、ただを見送っていた。
締め切りぎりぎりだったと言われ、慌ててエレベーターに乗り込んだ。
406番のプレートを貰うと同時に受付終了のベルが鳴り響いた。
何やらべちゃべちゃとした視線や、
どうでもいい説明を聞き流して、
着いて来いと言われたとおりに着いて行く。
「(キルアを落としたくないけど、そうすると3人の腕力が鍛えられなくて、
イルミに制裁加えるのはまだ無理だろうし。とりあえず、自分を鍛える・・・・かな)」
今のところ上手く進んでいる未来。
自分が関与して、4人が強くならないのはゴメンだ。
ブーツを改造して、インラインスケートにしてもらっていたは、
すいすいと受験者を縫いながら進んでゆく。
「ヒソカ!!」
「やあ★随分遅かったね◆」
「うん。ラストだった。皆がなかなか行かせてくれなかったから」
「念を習得したんだ?」
「うん。でもまだまだ」
「今度見せてよv」
「機会があればね。でも、説明はしない」
「OK★」
「ねえ、つかまってても良い?疲れてきた」
「もうかい?多分半分も来てないよ?」
「ん・・・まだ走れるけど面倒くさいが正解」
お前の頭は大丈夫かと言った目で見られていることなど気にせずに、
はヒソカの隣をすべる。
自分の知る(識っているという意味なら別にもいるが)、唯一のヒト。
映ってないときも、映った今も、全く態度が変わらない。
それがには嬉しかった。
向こうにいれば、やっぱり映ってた方がいいのかと思わされてしまう。
「仕方ないな◆」
「ありがとう。やっぱりヒソカは優しいよ」
「vv」
「あ、でも服掴むと伸びるよね・・・・どうしようかな」
「バンジーガム、付けてあげようか?」
「うん!」
ピエロっぽい衣装来た2人組が楽しげに話している・・・。
走りながらにも関わらず、先頭の方までそんな噂が広まったとか。
「前のほうが騒がしいね・・・・・」
「階段でもあったんじゃない?だってココ、地下100階だし」
「なるほど★」
「先行く。引っ張られたまんまじゃ、どうしたって上れないから。上で会おうね」
「いいのかい?ボクと一緒にいると変な目で見られるよ?」
「ヒソカ・・・・・何拾い食いしたの?」
「酷いな◆」
「ヒソカはあたしといるのイヤ?」
くつくつと笑いながら、後ろ向きにすべるを見やる。
不思議な子供。
あの幻影旅団団長さえ、その瞳に映ろうと躍起になった子。
普通の子供だ。
異世界から来た事を除けば。
しかしそれも、自分の興味範囲内ではない。
「イヤじゃないから、待ってて★」
「はあい。後で」
「転ぶよ?」
そう言った時には既に見えない彼方まで走っていて、
また、くつくつと笑いを漏らした。
はといえば、その勢いに乗り階段横のパイプを滑ると、
先頭を追い越し、出口から一気に外へ出る。
「・・・・・・流石に試験官追い越すのはまずかったかな」
クロノスに靴を飲ませて、元の形に戻したは、
一面に広がるどろどろを嫌そうな目で見ていた。
「構いませんよ」
「速いですね。地獄耳だし」
「お褒めに預かり光栄です」
「ねえねえ、お姉さんなんて名前?」
「人に名前を聞くときは、先に名乗るのが礼儀だと思うよ。ゴン君?」
「え?なんで俺の名前?」
「さっきサトツさんに話してるの聞こえたから。君はキルア君でしょ?」
「苗字も聞こえたんだろ?」
「だから?」
「ぷっ。ハンター試験て変人ばっか受けに来んの?」
「酷くない?」
自己紹介をし合って、なんだか日常だなと思えてしまった。
どうせなら仲良くなっておきたい。
トランプが飛び交う中、ぽけっとそれを見ながら、
後から追いついた2人の名前も確認する。
「は何処から来たのだ?」
「遠くて帰れないようなところ」
「え?」
「★」
「ヒソカが呼んでるから行くね」
「ちょっ・・」
待ってという言葉さえ吐かせてもらえず、
とたとたとヒソカの元へと走ってゆく。
普通の友達のように笑って、頭を撫でられて、赤面して。
ハンター試験はまだ始まったばかりだ。
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