閉鎖された空間。
外の空気が欲しい。
耳鳴りがまた、ほら、止まらなくなって、狂いそうになる。
息が出来ない。
2次試験合格者を乗せた飛行船が飛び立って半刻が経過した。
問い詰められる前に、颯爽と姿を隠したは、
ふらふらと廊下を歩きながら、彼を捜していた。
彼女にその気はなかったのかもしれない。
けれども、口を着いて出てきたのが、彼の名前だったのだ。
「?どうしたの?顔色悪いよ?」
「そう?なんともないよ」
嘘。
嘘。
嘘。
「ネテロさん、こんばんわ」
「おお。お主もゲームに参加するか?わしに勝てばハンターの称号を・・」
「いえ。結構です。ゴン、キルア、ヒソカ見なかった?」
「あんな奴捜してどうすんだ?」
「ちょっと用事」
「それより医務室に行った方がいいよ。やっぱり顔色・・」
ぱしんっ。
「あ・・・ごめっ。見てないならいいよ。それじゃ」
払いのけてしまった君の手は、
自分の耳鳴りを増幅させるものでしかなかったから。
密室にいれば息が詰まる。
ヒトと接すればもっと詰まる。
息が出来なくなる。
余裕なんて、一欠けらもなかった。
なんとかオーラを辿ろうとするも、
頭にまで響いてくる雑音が、其れを妨げる。
何とか見つけ出した人の避けている場所。
禍々しいオーラと派手な化粧。
「?」
やっと見つけた。
ふらふらとヒソカに近寄っていくを、遠巻きに見つめる幾人か。
大丈夫か?操られているのでは?
そんなもの、もう聞こえないほど、耳が鳴っている。
とさりと足を折ってヒソカの目の前にへたり込んだは、
ヒソカの服の裾を掴んで、床に落とした一滴。
「タス・・ケ・・・テ」
「言ってたあれ?そんなに酷いの?」
「息が・・出来ナイ・・ノ」
「個室なら窓開けられるかな?立てる?」
ふるふる。
「仕方ないな★いっこ貸しね◆」
こくり。
ひょいっと抱き上げられた瞬間、感じられたヌクモリ。
少しだけ、ほんの少しだけ収まった耳鳴り。
そのままを抱いて個室へ向かう。
少しだけなら窓を開ける許可を貰い、密室でない静かな空間を作ることができた。
何にも属さぬ筈の自分さえ、
君に映ったあの時、感じてしまった歓喜。
それはもう、絶頂に似た快楽だったのかもしれない。
強いわけでも、熟れそうなわけでもないのに。
君に惹かれるわけを、ボクは追求しようとはしない。
無意味だ。
部屋で椅子に落ち着けば、念のナイフで傷つけられていく細い手首。
こんな痛みじゃ、足りない。
更に強く引こうとした腕は、ヒソカによって、止められてしまうのだけれど。
「離して」
「がそれ、止めたらね?」
「イヤ・・・・無理・・・」
「ほら★」
「ヤっ・・・・!」
その空間に入ってさえ、なかなか止まらぬ耳鳴り。
けれど叫んではいけないと何処かでストップがかかる。
抑制しなければ。
信号。
切る。
そんな一連の動作を許すさぬと言うが如くに、
ヒソカは強くを抱いて、震える背中を撫でながら、
彼女が眠ってしまうまで、ずっと、ずっと。
泣きつかれてか、眠ってしまったの包帯を取り替えて、
携帯のボタンをプッシュする。
お馴染みの機会音が切れたと同時に聞こえた、不機嫌な声。
こちらに感じるのは、戦闘欲以外の何ものでもない。
「やあ◆」
『なんのようだ』
「いいのかい?そんな邪険にしてvのことなのに?」
『がどうかしたのか!!』
「移動中の飛行船の中で壊れたよ★」
『なっ!!』
「今は眠ってるけどね?」
『大丈夫なのか!?』
「さあ?それを教える義理はボクにはないからvv」
『おい!待・・』
ぶちりと切れた後もうざいほどにかかってくるから、
結局電源を切ってしまった。
何をしようとしていたのだろう。
問題が生じたという報告か?
何のために。
目の前で眠る少女が、団長に大きな影響を与えている事は然り。
けれど、ここまでとは思っていなかった。
君に出来た貸しを、何に使おう。
今までは自分の欲のためだった・・・・のに。
「1日、君と過ごしてみたいよ◆vv」
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