「イルミ・・・・」
「何?」
「もう5日目だよ?あたしが殺される」
「なんで?」
「プレート集めたら捜すって約束してるから」
「集めてないって言えば平気でしょ」
「・・・・・・無理だと思う」
何故か、湖畔で仲睦まじく食事をする2人は、
朝日に煌く水面を見ながら、
そんな会話を繰り広げていた。
色々と言い包められたり、挙句、実力行使されたりと、
まあ、ありとあらゆる手を使って、彼女をそばにおいておいたイルミ。
求めてしまった自分のココロを知るため。
だった。
最初は。
「折角の綺麗な髪が台無しだね」
「別に」
「水もあるんだし、洗ったらいいのに」
「あと2日でしょ?面倒くさい」
「・・・・・・・水浴びしたら、ヒソカ捜しに行かないって言ったら?」
「する」
何処の子供だと溜息をついて、
終わったら殺気でも飛ばしてくれるように言付けを頼む。
今はいつなのか、体内時計が眠る時間を示しつつあるから、
お昼前といったところか。
先ほどの食事は朝昼兼用だな。などと、どうでもいいことを考える。
ざわり。
常人には聞こえないだろう、葉のざわめきが変わる。
ものの通った後に示すものへの変化。
「どちら様?」
答えない。
そりゃそうかと思いつつ、気乗りしないながらも円を発動しようとした瞬間、
飛んできたのは・・・・・。
「ハゲ」
いや、別にハゲが飛んできたわけではないのだが、
見るからにクナイらしいその武器。
掠りもしなかったから、毒が塗られていたとしても平気であろう。
「さしずめ、キルアが交渉を持ちかけたのは何故だろう?ってところ」
でしょう?と問う前に姿を見せたそいつ。
「何故、オレのターゲットを知っていた」
「内緒」
「吐け」
「嫌だ」
首筋に当てられたくない。
少しずつひかれていきながらついていく傷に、
懐かしさすら感じてしまう自分は・・・・・オカシイ。
「オンナを手にかけるのは趣味じゃない」
「別に知らなくても、合格できるんだからいいと思うけど?」
「そうか。お前を殺してもオレは合格できる」
「あたしは貴方に殺されない。死ぬなら自分でって決めてるから」
一瞬出来てしまった隙は、
多分、自分の言動の所為だろなと思いながら、
一気に間合いを取る。
飛び道具は厄介だ。
まあ、クロノスに飲み込ませれば別だが、
眠たい今、念能力を使えば、ぶっ倒れるのは目に見えている。
直ぐに間合いをつめてきたハゲを交わして、また間合いを取る。
湖まで着けば、イルミが何とかしてくれる筈。
そう思った矢先に殴られた感触。
くらりと頭が回る。
スピードは上かもしれない。
けれど、力は圧倒的に下。
キルアはもっと強いんだろうなと考えながら、地面とご対面する。
「(キルア・・・ごめん)」
「どうした?もう終わりじゃないだろうな?」
弱い自分は嫌いじゃなかった。
痛みに逃げる自分も嫌いじゃなかった。
今は、反吐が出るほど憎い。
日に当たらない数ヶ月の間に衰えた筋力や、腕の細さも、
全てが憎む対称にしかなり得ないほど。
「嗚呼。塵に等しき吾人生はって感じがする」
「余裕ってことはまだ行け・・」
どがっ。
凄まじい音と共に拳をラッシュしながら、ある程度打ち込むと、
両足の間接をはずして、蹴りで木と激突させれば、
可哀想なその木は折れてしまった。
頬を伝った血。
後ろを見やればくないの刺さった一本の木が目に入る。
「流石だね」
「っ!!!」
「でも、貴方には最終試験出てもらわないと困るから、
あたしもこれ以上疲れたくないし、お互いまた次の機会にってことにしようよ」
「・・・っそ!!」
「あたしに足りないのは一撃の重み。キルアは多分、油断してたんだろうね」
君の弱みに付込めるあたしは、かなり卑怯。
それじゃあ、と言って、イルミのいる湖畔の方へと帰っていく。
鬱蒼と茂る木々達を抜ければ、
怪訝そうな顔つきのイルミが、上半身裸で佇んでいた。
「なに?それ」
「弱さの証明」
「大丈夫?」
「じゃない」
ふらっとイルミのほうへと倒れて直ぐ、
は意識を失った。
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