目をうっすらと開いて見えたのは、
声を失うくらいの、厚化粧だったり。
ごつんっと子気味のいい音が響いて、
頭を抱える。
奇術師はおでこを紅くしながら、それでも微笑み絶やさずに、
にったりゃあっと彼女を見つめている。
「大丈夫?」
「んっ・・・・ありがとイルミ」
「どういたしまして」
「?」
やばい。
物凄くやばい。
エンジン音からして、今は飛行船の中。
そして多分、気を使ってくれたのだろう、
少しばかり外気の香る個室に佇む、自分と暗殺者と奇術師。
「嘘吐いたら針千本★」
「ごめんなさい」
「貸し5コくらいに増やそうかな◆」
「うん。いいよ」
「「?」」
あまりに自然と、理不尽な要求をのむモノだから、
ヒソカとイルミは、一瞬言葉を失った。
ベッドからゆっくり身を起こし、ヒソカを見据える。
勿論怖い。
冗談だろうと、彼から流れてくる殺気は。
けれど、嘘を吐く悲しみも、吐かれる辛さも知っている。
いい子ね。
可愛くない。
よく頑張ったわ。
役立たず。
笑顔が素敵よ。
オカシナな子。
「約束破った事に変わりはないし」
「仕方ないな★今回だけね?」
「・・・・・いいの?」
「ただし、貸し1個なのは変わらないよvv」
「うん」
「そういえば、10分前に呼び出されてたっけ」
・・・・・・・・・・・・。
ふっと走った沈黙の後、
が面談室にダッシュしたのは言うまでもない。
「失礼します。ごめんなさい」
「かまわんかまわん。さて、座りなされ」
「はい」
「いくつか質問をする。まず、何故ハンター試験を受けた」
「・・・・・・・・・・・」
「どうかしたかね?」
「いいえ」
ヒロインになりたいから?
そうじゃない。
4人と仲良くなりたいから?
其れも違う。
思い出して。
あたしは、何一つ・・・・・。
「受けた方がいいと言われたから」
「ほう。でわ、一番注目している人物は?」
「・・・・・・・いない」
「8人の中で一番戦いたくない人物は誰じゃ?」
「誰だろう。それもいないかな」
下がってよいといわれて扉を閉じた後、
何処までも続くような廊下に、少し眩暈を覚えた。
興味を引かれることなどない。
ただ其処に在るだけだもの。
笑って其処に在るだけだもの。
「?面談終わったのかい?」
「うん」
自然、抱き上げられる形になる。
何せ身長差は30cm。
「ヒソカ・・・・どうしようか」
「?」
「あたし、死ぬ事にも、生きる事にも、興味ないのかも」
「ふ〜ん★」
「誰にも興味なくて、でも皆と一緒にいたいんだって。
どうしてかな。理屈じゃないのかな。また、考える事を止めたくなってきた」
止めてしまえばとは言わなかった。
自分だって、彼女に映っている方がいいに決まっている。
はじめて見た時は、ただ、興味深いだけだった君。
「とりあえず、戻るかい?」
こくり。
久々に見せた言葉を発さぬに微笑んで、
ヒソカは黙って歩き出した。
面談で何があったのかは判りかねるが、
こんなにも興味深い存在は本当に初めてだから、
団長もそうだったのだろうな、とふと思う。
手に入れたいものほど、手に入りにくい。
きっと君は、誰のものにもならないのだろうね。
3日後、ハンター協会経営のホテルに到着し、
大きな体育館とも呼ぶべきところへ通された。
ここまでは原作と一緒。
ヒソカの隣に佇んで、説明を聞き流す。
「最終試験の組み合わせはこれじゃ」
ぱらりと取り払われた布の向こう。
一直線に決勝へ向かう自分の線に、はほっとした。
ネテロに判断基準を聞いているキルアを見やって、
ポツリとこぼしたのは、自嘲。
隣のヒソカにさえ、聞こえない声で呟く戒め。
「貴方も一緒」
何かに対する興味、関心、強い思い入れ。
それはどんな形であってもいい。
歪んでいたって、何したって。
それが、あたしにも、キルアにも足りない。
「なかなか頑張った方だと思うけどね◆」
「あたしは、未知のモノに魅力を感じないから」
「?」
「ハンターって、そうゆう者。ヒソカはだって、青い果実が大好きでしょ?」
「君もだよ★」
「嬉しくない」
今世紀最大の溜息をついたがいたとかいないとか・・・・・。
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