「イル・・」
「ダメ」
「まだ何も言ってないよ?」
「ヒソカに連絡取る気だろ?」
「ヒソカじゃない」
「あの3人の中の誰かでもダメ」
「そうでもない」
「門番系統もダメ」
は盛大な溜息をついた。
イルミに連れ去られて早1週間。
あと1週間で3人が到着してしまう。
まあ、自分がココにいても何も変わる事はないのだろうが、
早く受かった事を知らせたい。
最初の3日は我慢した。
1日中一緒にいること。
キライじゃない。
むしろ好きな方だと思われる。
彼の、子供っぽさはどこか、色々と彷彿させるところがあるから。
隣に座らされたベッドから立ち上がって、
彼を見据えれば、きょとんとしたまま。
「イルミ」
「ダメ」
「あたし、ココにいてもいい?って言おうとしたんだよ?」
「え」
「墓穴掘ったね」
そんなの認めないとイルミが言葉を発する前に、
は自らの言葉で、それを遮った。
「いつでも抜け出せたのに、ココにいた理由判る?」
「・・・・・・・・」
「興味を持ってくれて嬉しかった。あたしの念能力にでも何でも」
「何・・・・勘違いしてるの?」
「うん。勘違いならいいや」
「すとっぷ」
「何?」
「ごめん嘘。興味、あるよ」
自分は、知ってしまった。
彼は、知らないから、とてもとても純粋で、
何かを求める事を厭わないから。
羨ましくも、あったのかもしれない。
まっすぐにこちらを見て、服の裾を掴むイルミが、
至極、子供のように見えてしまった。
「ちゃんと日光浴びるんだよ?」
「ダメ」
「食事も。とってないあたしが言えることじゃないけど」
「ダメ」
「また来るから」
「」
行って欲しくないなんて。
ずっと一緒にいたいなんて。
こんな気持ちイラナイ・・・・筈なのに。
「イルミの事好きだよ」
「それ、蜘蛛の全員に言えるくせに」
「うん。ゴメンね。ありがとう」
冗談でも、愛した人の成れの果てを思い描いてくれて。
じゃあねと手を振って、クロノスに飲まれていく。
「冗談じゃないし、諦めないよ」
そう、イルミが言っている事等露知らず・・・・。
「誰か残ってるし。ヒソカの嘘つき」
ゾルディック家から、自分の時間を巻き戻し、
敷地外に出たは、飛行船のチケットを取り、アジトへと帰ってきていた。
はやる気持ちを抑えられずに走り出す。
勢い良く扉を開ければ、ぽかんと佇む旅団員。
「ただいま」
一拍おいてだっと駆け寄ってくる彼等の中の1人を見つける。
拾ってくれた人。
見つけてくれた人。
居場所を確立させてくれた人。
「クロロ!」
「!!!!!」
「見て、ハンターライセンス。受かったよ!あたし」
「あっああ」
「音沙汰無いから心配したんだよ?」
「ごめんね。コルトピ」
「包帯は巻きなおしてたか?」
「うん」
今がいるのは、クロロの腕の中。
丁度抱き上げられた形で、コルトピやボノレノフを見下ろしている。
自分の力だけではないにしろ、
少しばかりの冒険は、幕を閉じたのだ。
2人ほど懐いていないと認識していたクロロは、
今も腕の中にいるを、凝視したままだ。
残っている面々がおめでとうと声をかけていく中、
試験中に、一度だけ奇術師がよこした連絡のことを思い出し、
一層強く、を抱きしめた。
「壊れたらしいな」
『え?!』
「どうして知ってるの?」
「ヒソカが連絡をよこした」
「そうなんだ。うん。飛行船に乗って、あまりにも窮屈だったから」
「それだけか?」
「うん」
ほっと胸をなでおろす団員達。
ただし、が言っているのは壊れているかどうかの話し。
壊れる寸前の最終試験の出来事や、
サバイバル生活の中で襲われた事なんかは、
意図的に話さないでおいた。
勿論、イルミに拉致られていた事も・・・だ。
「そうか・・・・なんて言うと思ったか?」
「クロロ?」
「パクノダ」
「判ってるわ」
「やっ止めといた方がいいと思うけど」
「他に何があったかすべて話せば、実力行使はしない」
「話さなきゃダメなの?」
「・・・っく」
団長、押されるんじゃない!!と、
団員のココロの声が、初めて一緒になった。
その後、結局試験中のことを話し、こっぴどく叱られたのは言うまでもない。
そんなクロロを見たは、
ゾルディック家の崩壊は、自分が食い止めると、
もう一度心に刻み込んだ。
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