ベーコンの焼ける音がして、

コーンスープの湯気が立ち、

トーストの香ばしい匂いがする。

そんな清清しい朝。



ベッドからゆっくり身体を起こして、

キッチンから聞こえる、顔、洗っといでよの声を、

まだ冷め切らぬ頭で聞き取った後は、

少しかいた寝汗を一緒にシャワーで流してしまって、

すっかり眼を醒ました。



他愛もない会話で椅子を引き、

卵を割る音に、大丈夫か。なんて、

7つも年上の彼女に声をかけようと振り向いた瞳に映ったのは・・・・。




「何やってんだよ・・・・・」

「え?料理」

じゃなくて、イルミのことだと思うよ」

「・・・・・・」

「イルミ、邪魔」

「聞こえない」




フライパンからベーコンエッグをトーストに乗せて、

後ろから、黒髪に抱きすくめられたまま、

テーブルへと赴く。

朝からずっとこの調子だ。




「オレンジジュースとミルクあるけど」

「「おれんじ」」

「だろうと思った。はい」

「さんきゅ」

「オレ、珈琲」

「判ってるから、そろそろ離れて」

「イヤだ」

「食べれないよ」

「大丈夫」




椅子に座ろうとしても離れないので、

仕方なく、イルミの間に収まる。

既に用意していたホット珈琲とココアを自分の前において、

いただきますと手を合わした。




「美味い」

「それくらい誰でも作れると思う」

「でも美味しいよ」

「ありがと。スープはおかわりあるから」




2人は、の後ろにいる物体を、見ないことにしたらしい。

一見、仲良し兄弟のさわやかな朝の光景なのに、

彼女の後ろにいる黒髪ロングは、

顔をの肩に乗せたまま、まるで背後霊の如く、

その場に存在している。

怖い事のこの上ない。






「行かないって、昨日も言ったでしょ」

「なんで」

「ヨークシンに用事があるから」

もヨークシン行くの?」

「うん。誘われたからね」

「俺らも行くんだ。一緒に行かね?」

「誘われたからって言ったの聞いてた?」

「オレの話終わってない」

「終わってます」




フルーツサラダに手を伸ばしながら、

ぱかりと口を開けるイルミに持っていってしまうあたり、

やはり、この人のことを嫌いではないのだろうなとは思う。




「2人はどんな修行するんだっけ?」

「とりあえず発の修行」

「だろうね」

はどうするの?」

「一緒にやろうにも、どう変化が激しくなればいいのかわかんないし、
とりあえず地道に鍛えとこうと思ってるよ」

「おかわり」




もう一すくいのサラダを背後霊に放り込んで、また、2人に向き直る。




「筋トレ?」

「あたしね、オーラの総大量が増えないから、
2人みたいに修行して、念を強くして、一撃必殺って訳には行かないの。
だから、地道にちょっとずつ、身体の能力上げていくしかないってわけです」

「なるほど」





「今度はどれ?」

「家」

「行かないって」

「飯食わない」

「会いにも行かないからね」

「困る」

「キルア?ゾルディック家って、どうゆう子育てしてんの?」

「聞くなよ」




食べ終わったお皿を重ねて、

後ろにイルミをくっつけたまま、はスポンジを手に取った。




「オレ達の修行、手伝ってくれる?」

「あたしに出来る事なら。でも、教えられないとは思う」

「なんで?」

「強くないから」

「嘘付け」

「ホントだよ。キルアの癖を知らなかったら、あたしは指一本触れられなかった」

「・・・・っ!」

「オレがかわりに見ようか?」

「いい。イルミがキルアのこと好きなのはわかるけど、
キルアはもう、自分の導を見つけてるから心配ないと思う。
イルミも早く見つけたほうがいいよ。導」

「何其れ」

「ヒカリ」




自分を、見つけてくれる光。

今も本を読み耽っているであろう自分の導に、

は少しばかり、思いを寄せた。




「さんきゅ」

「?」

「兄貴は早く帰れよ」

を連れて行っていいならね」

「ダメに決まってんだろ」

「兄弟喧嘩してもいいけど、部屋から出てやって。邪魔」




まだまだ睨みあったままだけれど。

隣にたって食器を拭いてくれているゴンと眼を合わせ、苦笑した。

仲が良すぎるのも問題だ。




「イルミ」

「イヤだ」

「いい子だから」

「オレ、いい子じゃないし」

「じゃあ、会いに行かなくてもいいの」

「ダメ」

「じゃあ離れて」

「修行邪魔しないから」

「どうする?」

「いいんじゃない?」

「ゴン!!!」

「見てるだけだって。キルが鍛えて欲しいなら口出すけど」

「いらねえ!!」




ボノ、コルトピ、どうしたら子育てはうまくいくんですか?

息子達が反抗期です。




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