「組み手?」
「そう」
「あたし、弱いって言ったのに」
「じゃ、代わりにオレが・・」
「イルミがやるならあたしがやる」
朝食を無事に(?)終えて、
2人が発の修行を終えた昼過ぎ、
食後の紅茶に口をつけながら、
やはり自分のせなにへばりついている黒髪の発言を一掃した。
「じゃ、決まりだな!!」
「ゴンも?」
「うん!!」
「・・・・・・・念使ってもいいならやる」
「はあ?!」
「そっちも使っていいよ」
「あのな!!俺ら発の修行で疲れてんだぜ?」
「あの程度で?」
其の言葉が引き金となった。
やはり、アサシンとして育てられた奴の性か、
元々のプライドが高いのかは判りかねるが、
子供だということは確かだ。
そしてが、わざと挑発するような言葉を吐いた事も。
「敵の挑発に乗せられるように育てた覚えはないんだけど」
「兄貴に育てられた覚えすらねえよ!!」
「キルア、落ち着いて」
「落ち着いてられっか!!」
「じゃあ、はじめようか」
今度こそは離れてくれるらしいイルミから一気に数歩間合いを取って、
部屋の中心に置かれた机を端へとよける。
「ここで?」
「うん?不満?」
「狭いと思うけど」
「頭、ぶつけないように気をつけてね?」
具現化されたクロノスが、ちょこんと座る隣に、
は凛と、背筋を伸ばした。
1人ずつどうぞと声をかけて、
指で挑発してやれば、
むかちんと青筋を立てたキルアが、すぐさま肢曲をこなして近づいてくる。
「念は使わないの?」
そう言って殺気を送ってやれば、応戦してくれたようで、
少し、楽しんでいる自分に苦笑した。
飛んでくる拳の押収を、右へ左へ上へ下へと避け続ける。
「組み手の意味判ってるか!?」
「遊びでやってるの?」
「むかつく」
「なら、殺す気で来たらいいのに」
「殺したら、オレがキルを殺すよ」
「イルミは黙って」
「判った」
判ったのかよと突っ込みを入れることも忘れずに、スイッチを入れる。
君たちの敵になり得るんだろう自分を、
殺すことが出来るように。
強くならなければ。
この世界を守るという、大それた使命を果たすために。
がんっという音が響いて、
次の瞬間にはキルアが壁に叩きつけられていた。
どうやら衝撃は思ったよりも少なかったようで、
背中をさすりながら、何事もなかったかのように立ち上がる。
「ずりい」
「獲物を持ってないなんて、誰も言ってない」
の手には、いつかの杖が握りられている。
何の変哲もない、只の、杖。
「オレが行く!!」
「どうぞ」
元気に飛び出していったゴンの攻撃を避けたと同時、
振り下ろされた杖は頭に直撃。
絨毯とあつい接吻を交わしてしまったゴンは、
どうやら毛玉が中に入ったようだ。
何度か咳き込んだ後、あの恐ろしい脚力を発揮した。
真下からに迫ってくるゴンの前に現れたのは、闇。
「クロノスがいること忘れちゃだめだよ?」
ごいんと言う音共に、吐き出され、
天井に頭をしこたまぶつけたゴンが、
大きなタンコブを抱えながら涙眼になっているのを見て、は微笑む。
「やるね。オレも相手してもらっていい?」
「寝言は寝て言うものだと思う」
「寝言じゃないよ」
「じゃあ冗談は好きじゃない」
「冗談でもないって」
「針を構えないで」
隙をついたと思ったのか、しゅんという風の音と、
回転させて、風の抵抗もなく後ろに突き出された杖とじゃ、スピードが違った。
股間に入り込んだ其れを振り上げれば、
もんどりうつのは眼に見ているはずであろう。
声になっていない叫びが、部屋中に木霊した。
「キルア!!!」
「大丈夫。手加減したから」
「・・・・・・・・容赦ないね」
「イルミ程じゃない」
「死にそうだけど?」
自分は女だし、どれほど痛いのか見当もつかないけれど、
あのキルアがうずくまって動かないところを見ると、
相当痛かったのかもしれない。
すっとしゃがんで顔色を伺おうとしたに飛んできた蹴りを、
これまた先ほどと同じ方法で薙ぎ払えば、
今度はゴンの叫びが木霊する。
「今日は、ここまでにしよっか」
なんとか首を縦に振ったキルアの合図で、
其の日の組み手は、の圧勝に終わった。
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