組み手をしたり、母親をしたりで、

すぐに1ヶ月など過ぎてしまった。

イルミはずっと居座っていたが、どうやらヒソカに会いたくはないらしい。

今朝方早くに帰っていった。




「明後日か・・・」

「うん」

「いい経験にはなると思うよ」

「なあ、はどっちに賭ける?」

「ヒソカ」

「やっぱり?」




そう言ってはにかむゴンに、こちらからも笑顔を向ける。

自分の実力を偽らない君は好きだ。




「じゃあ、しますか。組み手」




今度こそはと、突進しては壁にぶち当たり出来た傷をなぜる。

一度も勝てた事がない2人は、

どこが弱いんだよともらしていたりいなかったり。

ここ1週間は、クロノス抜きでやっているが、

それでも、攻撃はかする程度。




「避けるの上手くなってきたよね」

「これだけ長いのが飛び回ってりゃ・・・・な!!」

「キルア、爪、切ったほうがいいって言ったのに」

「切るとかの問題じゃねえし!!」

「そ?油断大敵。左ががら空き」




それを誘っているとは露知らず、が杖を打ち込む・・・・わけがない。

にやりと笑ったキルアの二の腕に、

押し戻した杖が、めり込んだ。




「ってえ!!!!!」

「・・・・・・・・・莫迦?」

「嗚呼!!くそ!!」




力は強くなくとも、細長い棒が食い込めば、

それなりの痛みは味わえるわけで。

綺麗に赤丸がついた腕が、痛々しく垂れ下がる。




「次、オレ!!」

「ゴンは敵に近づきすぎる悪い癖、直さないとね」

「楽しいんだもん!」

「もん・・・・って」




キルアよりもさらに間合いをつめてくる彼には、

押し出した杖を振り回してやればいい。

かいくぐってくる軌道は、絞られてしまうから。

回した蹴りを避けてくれやがった彼に、もう一度杖が振り下ろされる。


それを手でいなして、けしかけられる拳を意図も簡単に避けたは、

そのまま蹴りをゴンの懐へ。

もちろん入るとは思っていない。

後で振り回した杖を、今度は横腹へ叩いた。

咄嗟に振り下ろしたゴンの手は、むなしくも空を切り、

痛みに耐えようとしたその瞬間。




ばきんっ。




一瞬呆けた3人は、からんからんっと崩れ落ちる杖を、

ゆうっくりと視線で追った。




「ごっごめん!!」

「いいよ。強度を計算してなかったあたしの責任」

「普通の木だもんな」

「そうだね」




ここ1ヶ月、振り続けてきた愛杖。

その片割れを拾い上げて、クロノスを出したは、それを飲ませた。

使いやすい其れを、みすみす手放したくはない。

程なくして吐き出された綺麗な杖を、

はしっかりと握り締めて、ふと、声を漏らした。




「あ・・・」

「なんだよ」

「ううん(周で包めば、そんなこともなくなるのか)」

「続きしよう!!」

「ゴメン、今日はこれまでにしてくれない?行きたいところが出来たから」




不平を漏らした2人だが、

付き合ってもらっている身で、強引に引き止めるわけにも行かない。

とりあえず、2人で出来る修行をするしか、方法はないだろう。








「良かった。近くにいて」

「久しぶりだな!元気にしてたか?」

「うん元気。2人って何処に住んでるの?」

「同棲してるみたいな言い方するんじゃねえ。気色悪ぃ」

「ゴメン」

「いや、謝ることでもねえんだけどよ?」




とある喫茶店のオープンテラスに集う、ちょんまげと怪物と女。

勿論、視線が痛々しすぎて、早々に移動したわけだが。

3人が着いたのは、今、2人が仕方なく一緒に住んでいるらしい住宅。

というより山小屋。




「汚い」

「悪かったな!仮住まいなんだから別にいいだろ!」

「で、なんなんだよ。急にノブナガ呼び出して」

「あたしと戦って欲しい」

「はあ?」

「ちょっと、この子の強度を試したくて」




自分の微弱なオーラで包んだ杖が、いったい何処までの攻撃に耐えられるのか。

刃物を相手に出来るなら素晴らしい。

ウボォーも居るとは思わなかったが、

いるならいるで、後で、殴るでも蹴るでもしてもらえば更に良い。




「それならお安い御用だぜ」




すらりと抜かれた刀は、きらりと日に当たって光る。

ウボォーギンは椅子に座り込み、楽しむ事を決めたらしい。

始めの合図で、お互いが飛んだ。

ぎりぎりと首に近づいてくる彼の刀を、なんとか押し戻そうとする

やはり、スピードも力も差は歴然だ。

ふっと抜かれた力に、強張っていた身体が、

安堵の溜息を漏らしたのは、自然な事であろう。




「ぎりぎりだな。オレより強い奴が刀ふるってたら、真っ二つだぜ」

「ノブナガより強い刀使いなんて、そうそういないから平気だよ」

「オレが叩き割ってやろうか?」

「やめて。絶対折れる」




からからと響く地響きのような笑いに耳を塞いで、

とりあえず、ノブナガの刀に打ち勝った自分の杖を褒めた。




「あ、そうだノブナガ、はい」

「なんだこれ」

「誕生日プレゼント」




手渡された和柄の箱に入っていたのは、

おはぎとかお団子とか京菓子とか。

いったい何処から手に入れたのだろう。




「なんで俺の誕生日なんか知ってんだよ」

「何故でしょう」



へへっと笑って、クロノスを背負う彼女を見ていれば、

誕生日も良いかななんて、初めて思えてしまったり。

団長に知られないようしなければと、

の帰ってしまった山小屋で、

2人は美味しい和菓子を、堪能していたとか。




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